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イッセイエッセイ

994号 戦場常在

2014年09月30日(火)

 酔人閑話と題して季節ごとに、所感が記された端書を送ってくれる企業の会長がおられる。今月の言葉は「戦場は千変万化」(百八十九話)というものである。
 武田信玄の老将で「不死身の鬼美濃」と異名をとった馬場美濃守信房の言葉である。
 「戦場は千変万化にて、かねて定めたることに違うこともあるなれば、手はずの違うところに任せて、よく働くをもって肝要とす。定めたるところの違へば、それに当惑して狼狽するにより、大なる負けにもなり、きたなき首尾にもなるものなり」
 この信房(信勝とも称した)の業績について森銑三著「偉人暦」にもないか調べてみた。予想どおり記述があり、上記と同様の言葉も出ている。他の老臣達と主君勝頼を諫めてもかなわず参戦し、天正三年五月二十一日長篠の戦のあった日に六十二歳をもって討死を遂げている。
 戦闘局面は常に変化し、意図したプラン通りには行かないのが普通であり、こだわることなく違った状況に任せて懸命に戦うことが大事、と端書に解説がされている。
 さまざまな災害に対処するための防災訓練でも、シナリオが現実的でないとか、もしああなったらどうするのか、といった疑問がしばしば言われる訳だが、今年の8月末の広島の土砂災害、また昨日発生した御嶽山の噴火など、どれをとっても思わぬ事故ばかりである。型通りのものはないのである。

(2014.9.28 記)