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イッセイエッセイ

991号 ふり返る

2014年09月26日(金)

 小学校の学力テストで子供がよく相違える問題(教育用語では正答率の低い問題)について、きょうは先生達と論じてみた。
 その代表例が、算数の「小数」と「比例」が組み合わさった問題である。
 今年の学力テストでは、まず80cmの長さのテープに対して1.2倍の長さのテープは何cmかという問題が出た。これは80cm×1.2という答であり、ほとんど相違うことはない。しかし、次にこの80cmのテープの0.4倍の長さを求める問題の答が80cm×0.4とはならず、80cm÷0.4の選択肢を選ぶ誤答がかなり多いという結果なのだ。
 なぜ掛算にせずに割算にするのだろうかと、子供の心理に立ってみたつまづきの原因を先生たちに聞いてみた。大人的な考えで推測して教えては不都合だからだ。
 先生たちの返事では、まず1.2倍と0.4倍という数の同質性と連続性を実感できないところにどうやら原因があると言う。その結果、対象となる数80cm(1倍)よりも小さく感じる数0.4のような場合は、掛けるのではなくこれの数で割ろうとする、つまり整数の計算問題の時の先入観に引きずられるらしいと言う。このところを学力テストは突いてくるのである。
 数学(算数)では、学習が進むにつれて絶えず数や計算の一般化(拡張)が行われるから、その度ごとに概念の意味を知りそれに馴れなければ、数学の階段を正しく登れない。例えば、大きな数から小さい数を引く常識から、小さい数から大きい数を引く非常識の階段(負の数の足し算)、角度が90°以内から90°超へ拡大する階段など飛躍が次々と出てくるのである。
 では先の問題において、掛算とすべきを割算にしてしまう多くの子供たちの「つまづき」に対し、相違いやすいので生徒によく注意することで済むのか。そうしたやり方では本当の解決はできない。来年の5年生も多くがまた間違うであろう。これを放置しないやり方はどういうものか。
 先生たちと論じ合った結果、大体以下のようなことになった。
(1) 1.2倍の数量的な意味及び1.2倍の掛算の演算のレベルは、ふつうの子供はわかるのだから、こ
 れとの関連において1倍より小さい0.4倍という意味を理解させる(小さいのに「倍」と表わすのは1
 つの矛盾なのである。本当は0.4「分」と表わすべきものなのである。)。10に等分した数直線(定規
 など)で、視覚的に0.4倍と1.2倍の位置を示し、0.4と1.2が1をはさんで連続性をもっていることを
 示す。
  次に、ある数に1.2倍を掛ける計算はわかるのだから、0.4倍も同じように(1より小さい数だが)、
 割るのではなく掛ける計算を行う。なぜなら1.2倍も1を掛け、また0.2を掛けて足したものを一度に
 計算しているに等しいのであり、全く同じ原理で計算しているにすぎないことを納得させる。
  そして0.1倍、0.5倍、0.9倍、1.5倍、2倍などを使って計算に馴れさせ、何倍という大きさの意味の
 実感を持たせる。
(2) その際にきわめて大切なことが「検算」のことである。
  80cm÷0.4は検算すると200cmになってしまう。この答えは80cmより大きく、小さい答になるはず
 のことは予想できるので、「検算」しただけで直感的に相違いであることに気づくことをわからせる。
 逆に80×0.4は検算すると32cmでありこの方がどうやら正しいことをわからせる。これが「検算」の
 力である。つまり算数では、足し算すべきところを引き算をしたり、掛け算すべきところを割り算をし
 たりして、逆の相違いをすることが多いので、「検算」をして数の大・小や位置関係をたしかめること
 の重要性を教える。
  さらに大切なことは、算数は「計算」をすることではなく、「検算」をすることであることを腑に落ちさ
 せる。例えば買い物をし金を払うことは物を買ったことではあるが、おつりをもらって初めて本当に買
 い物をしたことになることを納得させる。
  つまり万事「ふり返る」ことの大切さ、忘れ物はないか、かたづけをしたか等の重要性を教える。
(3) さらに大切なことは、では「検算」とはどういうことかを教える。
  「検算」のやり方としては、ア) もう一度同じ計算をくりかえす、イ) 答え(数字)の大きさを見比べ
 る、ウ) 加減乗除の逆を計算してみる、エ) 答えを出す途中においても、たえずその段階までの計
 算が正しいかをふり返り前に進む、などの方法があることをわからせる。
(4) 補完的に80cm:1倍=□cm:0.4倍、80cm:□cm=1倍:0.4倍という汎用性の高い比例対比式
 (これは6年生の教科書にあるらしいのだが)の意味と計算方法を教えることによって、より高い見方
 を得られるようにする。

(2014.9.22 記)