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イッセイエッセイ

987号 鴉のはなし

2014年09月24日(水)

 車中のラジオで生態学者の「カラスの話」を聴いていた。
 まずカラスというのは、大きい分類としてはスズメ科の仲間らしいのだ。われわれが普通カラスと呼んでいる鳥は、地球上には黒い色ものだけではなく、白いもの、白黒のカラスもいるようだ。また南米にはカラスはいないということである。
 日本で普通見かけるのは二種、やや大柄のハシブト鴉、すこし小さいハシボソ鴉である。しかし両者はカラスの仲間としては近類度が意外と遠いらしい。前者はもとは南方系、後者は比較的に北方系・乾燥系であって、警戒心の程度も強いと弱いの違いがある。
 カラスはオスの方が大型であり、生涯に一夫一婦制を守る鳥だという。夫婦仲はわるくないらしい。七つの子という童謡があるが、カラスは早春に四、五個の卵を一度に生む。巣などが壊された場合は、もう一度繁殖をやり直すという鳥らしくない観察もなされているようだ。五月ごろには雛がかえり、子育て期間は鳥の仲間の中では相当に長く、数年たっても「一鳥前」にならぬ鴉もいるそうだ。これも人間に似ている。このようにカラスは全体としても社会性を強くもった鳥族なのであり、寿命も10~20年あり、野生でないものはロンドン塔で飼われているもので60年の長寿カラスもいるという。これでは知恵も一層つくというものだ。
 ペアごとに繁殖できるようまた餌場確保のために縄張りをもっており、都市部では20haほどの広さ、周辺に行くほど広くなり、山の中だと数キロ四方になる。カラスは雑食で何でも食べ、食べないものは葉っぱぐらいのものという調査結果である。
 したがって生態が人間と似ているので、人と烏の生活圏と利害が重なるため、人間から嫌われる結果になる。案外なことにカラスは狩りが下手であり、生きた素早い動物などはほとんど捕えることができず、雑食なのである。また地上におけるスカヴェンジャー(腐肉食動物)の代表である。この点だけが取りえである。
 といったラジオの話しを聴き終えたころ、車は北潟湖の東畔近くの野道にさしかかる。ちょうど車の前をやや小型のカラスが急に現われてトントンと不器用に路を横切ろうとしているのに遭遇する。これはまだ親離れしていないカラスなのか、相手をまだみつけられていない若者カラスかと、人間的な感情を向けた。そうするとまた、やや遠くの丘陵の上空を二羽のカラスが湖の方に向けて飛んでゆく。これは話の中にあるペアのカラスが縄張りをアピールしているのかとも想像した。それにしても、いま見たカラスがハシブトなのかハシボソなのか見分けができず、一羽ずつ並んでもらわないと鑑定がかなわぬ感じだ。
 カラスは可愛ゆくもない鳥の代表であり、里山や里海湖にカラスが似合うとも言いにくいのは残念だ。いま問題のデング熱の蚊などと同様やっかいであり、菜園の仕事にとっては、カラスは敵役である。生ゴミは掘り返そうとし、トマトや瓜を食いちらす。
 カラスにまつわる唯一好きな言葉は、現実の黒いカラスとは関係のない「旅鴉」という言葉である。そしてこの漢字で表わさないと気分がでない言葉である。
 幼児はいつの時代もよく泣きまたよく笑うわけだが、いま泣いたカラスがまた笑うたと昔はよくいったが、そうした言葉も死んでしまった。どっちのカラスもいなくなってしまった。

(2014.9.7 記)