西川一誠後援会サイト

イッセイエッセイ詳細

イッセイエッセイ

978号 劇を見たころ

2014年09月11日(木)

 新劇俳優(民芸)の米倉斉加年さんが先月8月26日に亡くなられた。そして今日の新聞の文化欄(福井9/5)に演劇評論家の大笹吉雄氏による追悼記が出ている。
 「相手の演技を軽く受け止め、柔らかく包み込むような芸質だった」と演技を評価し、しかし「若いころの米倉さんは、むしろ逆の、積極的な演技を見せた」と記す。わが福井の宇野重吉さんとも後輩の立場で共演をしている。
 学生の頃、京都会館で初めて見たのは「私のかわいそうなマラート」という名前の劇であったと思う。劇の内容は全く憶えていない。俳優は当時まだ20代であったか、独特の高く強い調子の語り方で、他の俳優を個性において圧倒していた。一緒に見た寮友と観劇の帰り道、俳優の名前はどう読むのかと話した記憶がある。
 その時代は1~2か月ごとに新劇が巡演されていたから、時間があれば(時間は十分にあった)見たのである。いくつも見たはずだが憶えていない。ただある劇で加藤剛と女優がソファに座って談じているシーンがあって、道具のセットがよくなかったのか、突然にソファごと舞台の向こう側に二人の俳優がひっくり返ってしまった。あれあれと驚いたのだが、急いで舞台をまず暗転させしばらくで体制を整えて、あとは知らぬ顔で二人は芝居を続けたのであった。
 いつぞやハーモニーホールで小沢征爾さんが突然に指揮を止めて、また始めるということがあった。
 以前はそういうことに気をもむことはなかったが、最近は何かと気になってしまい、珍事が出来しないか心配になり、生の演奏や催し物は肩がこるのであまり見ないのである。

(2014.9.5 記)