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970号 地方と大都市の間

2014年08月13日(水)

 今日の新聞には、内閣府が8月9日に発表した「農村漁村に関する世論調査」のことが出ている。これによると、地域の将来について「衰退する」と答えた農村地域の住民が38%、「活性化する」と答えた割合の14%を大きく上回る。都市部の住民で田舎への定住を願望する人の割合は32%であり、前回2005年の調査よりも11%増え、年齢別では20年代が39%で最も多い。定住に必要な条件としては、医療機関68%、仕事62%となっている(複数回答)。

 先月、佐賀の唐津で全国知事会があった。JR九州に乗り博多から小倉まで1時間にも満たない距離だが、部分的な往復の利用をした。また、伊万里、有田経由で有明海側に出て、高速道路を利用した。佐賀、鳥栖、久留米、福岡は、高速道からの印象で、はなはだ大雑把だが、見た目にほとんど連続しているように見えた。

 以前の新聞の土曜版(朝日「be」2014.4.5)の「フロントランナー」に、JR九州の唐池恒二社長の活躍の様子を「やわらか頭でななつ星の先へ」として紹介されていた。「九州全体で人口が減っても、福岡など大きな市に人を集めれば十分やっていける」と述べられ、取材子の方はこれをうけ、人の流れを見極め地方発の成長モデルを示せるか…と書いている。

 日本では、東京が大きな「市場」であり、「競技場」であり、「会議場」であり、「放送局」であり、「出版社」であり、「芸能プロダクション」であり、「派遣会社」であり、「受付」であり、「中央駅」であり、「格付会社」であり、…

 トクヴィルは「アンシャン・レジームと革命」において、フランス革命直前のフランスの国土の状態を「パリが増大するにつれて、実際に地方の自由は例外なく消滅していった。いたる所で、独立した生活の兆候がとまってしまった。互いに異なっている諸州の相貌の諸特性も不明瞭になってしまった」(第7章)、と記述している。
 パリの絶えざる肥大化について、歴代のフランス国王たちが、おびただしい集中阻止のための勅令を出して、建物建造の制限等を命じたがことごとく失敗した史実も記述している。また一方で、絶対王制はパリを中心とした産業化を進めて、地方からの労働者の束縛を解いて保護したので、工業と労働者を著しく首都に集結させた。そして行政も中央集権化させた、と記述する。
 「パリにこの優位を確保したものは、パリの内部からではなく、外部から到来したものであった」(同)、と記述するトクヴィルの説明の意味はやや不明だが、首都が自己増殖したのではなく、地方から人口を継続的に強力に引き抜いていったことを言っているのだろう。そうならば、これは18世紀の首都への集中現象のダイナミズムを古典的に描写したということになる。

 この同じフランスの現代において、インターネット書籍販売の米・アマゾン社の無料配送が、フランス国内の小規模書店を駆逐するおそれありとして、これを禁止する法律を7月8日から発効させている。A社の方は1セント(1.4円)だけ配送料を乗せて販売する対抗手段を講じている。フランス政府は小型書店の方に最大5%割引を認めることとしている。まさに国内に沢山残る3500店とグローバル1社との競争ということになる。

 地方を振興させる方法は、レーガン流の首都中心のトリクルダウン論か、地方中枢都市の人口のダム論か、それとも田舎のガンバリズムか。今日の読売新聞「地球を読む」(伊藤元重・東大教授)の「日本の『稼ぐ力』-企業 攻めの戦略必要」では、座長を務められている経産省の「稼ぐ力創出研究会」が、世界的な大競争下で日本の産業の収益力をいかに高めるかの「グローバル経済国」と、人口減少に直面する地域経済の持続可能性をいかに確保するかの「ローカル経済国」を分けて分析していることに言及している。そして「より難しいのはローカル経済国の方だ。地域の企業の問題だけではない。人口減少が著しい地域の再編の問題であり、過剰とも見える保護体質の是正にもつながるからだ」と述べる。これは相変らず大都市中心の経済理論ではないかと思えるのであるが、考えるべきは人口減少や過剰といわれるものは、地方の問題ではなく大都市側の問題であるという視点がいるのではないか。

(2014.8.10 記)