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969号 ギリシャ選挙制度考

2014年08月11日(月)

 ギリシャの国会選挙をめぐる投票のさわがしさと面白さは、小説家である村上春樹のギリシャ滞在記「遠い太鼓」に詳しく書かれている。ギリシャ人は、ふるさとに帰って投票するというのだ(840号「故郷帰り投票」参照)

 小説と離れて、ギリシャの選挙制度そのものを調べてみたところ、ギリシャ議会は一院制(下院)で300人の議員で構成されており、任期は4年となっている。複数議席が割り当てられた48の選挙区から280人、1議席が割り当てられた8の選挙区の8人を選出、さらに国全体を1つの選挙区とした12人を選挙する。政党の得票率に比例して議席配分を決定した上で、得票率に応じて候補者の当選順位が決まる。
 選挙区に振り分けられた288議席について、有権者は政党名簿(選挙区単位)に投票すると同時に、各候補者に対して優先投票を行う(1名が標準だが、選挙区によっては複数の候補者に優先投票ができる)。48の選挙区ごとに、政党名簿の得票に従って各政党に議席配分を行い、政党ごとに優先投票の順にしたがい候補者が当選することになる。1議席が割り当てられた選挙区では、比較多数を獲得した政党名簿の中から、優先投票の数が最多の候補者が当選する。残る12議席は全国区において選出され、各党の合計得票数の割合に応じて、各党の名簿順に上位者を当選人としていく(拘束名簿式)。
 しかし、2012年に行なわれた5月選挙および6月選挙では300議席のうち250議席が選挙区に振り分けられ、残る50議席は得票率1位の政党に配分された。50議席の特別配分については、ギリシャ国内における経済危機という状況の中で、政権運営を安定させるための措置だということらしい。

 ギリシャの選挙の実際の仕方は、こうした文献資料だけでは当選の仕組みが分かるだけで全容は不明であり、他のことは抜けてしまう。そこに小説家の出番がある。小説家の見聞をもとに関係機関にギリシャ選挙の本当のところを問い合わせ、確認の途中経過が以下のようなことなのである。
 ギリシャでは、選挙の際に本籍地に帰って投票するため、投票日前後には帰省ラッシュとなり、交通機関が非常に混雑する。ギリシャにおいて、本籍地投票が採用されるに至った経緯はよく分からない。少なくともヨーロッパの他の国では本籍地投票をしている国は聞いたことがないというのが、外務省の担当課での理解である。ヨーロッパ諸国は地元とのつながりが強く、特に南部のギリシャは保守的であることが本籍地投票につながっているのではないかという。交通の混雑はあるが、本籍地投票はギリシャ国内では自然に受け入れられており、住所地投票に変更するといった議論はないようだ。

 また在京のギリシャ大使館の理解では、ギリシャでは本籍地で投票することは事実であるが、本人が手続きを取れば、現住所に投票権を移すことも可能である(この場合は、現住所の選挙区の候補者に投票)。手続きが面倒な人、将来的に地元に帰る人、田舎に思い入れのある人、こういう人達が本籍地投票を行っている。また、会社によっては投票休暇というものがあり、社員は帰省を兼ねて投票している。ギリシャにおいては本籍地投票が当たり前のことであり、日本のように転勤などで住所を転々としている人が、行く先々で代表者を選ぶ方が不思議だと、ギリシャ大使館では思っているようだ。また、本籍地は日本のそれと似たような制度のイメージであり、家族単位でまた出生の際の役所への届出による。本籍地の変更も可能であるが、その手続がどの程度複雑なのか、また婚姻時の取扱いなどの詳細は不明である。Never on Sunday、調べるにはさらに時間がいるということである。

(2014.7月~8月上旬 記)