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イッセイエッセイ

962号 子供の心(アリスの心)

2014年07月27日(日)

 村山由佳さんの翻訳による「不思議の国のアリス」を、仕事の都合があって一読した(なお813号参照)。
  アリスがうさぎの穴に落ち、体が縮んだり伸びたりして戸惑う場面から
  「アリスは、次々に思い浮かべはじめた。自分が知っている、同じ年頃の子供たちを全部ね、もし
  かして、そのうちの誰かと入れ変ったんじゃないかと思ったわけさ。(中略)だいたい、彼女・・は彼女
  なんだし、は私なんだから。―ああまったく、何がなんだか! こうなったら、前に知っていたは
  ずのことを今でもちゃんと知っているか試してみよっと。」(31頁)
  このあとアリスのメチャクチャな四の段の掛算や、ロンドンはパリの首都といったトンチンカンなつ
  ぶやきが続く。

   (ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」村山由佳訳 2006年メディアファクトリー)

 物語のこの初めの部分に至ったとき、自分の子供のころの記憶がふとよみがえった。
 自分のいま心に思っていることを、なぜだまっていると友達は全部分らないのだろう。相手の思っていることを、自分はちょっとはわかるけれど、なぜ自分の心の中のように全部はわからないのだろう。そして相手も同じようにわからないのだろうか。目の前の景色のように、友達みんなが互いの心の中を一緒にながめることができないのはなぜだろう。自分のこの体の外側の皮が邪魔しているのだろうか。自分と他人との心の境目はどこにあるのだろうか。それなら、身の回りにいる自分以外の誰かになりたいか。しかしそう想像してみても、決してそういう気持ちにはならないのはなぜなのだろうか。
 そしてこのようなことを回想するとき気づいたことだが、同時に心の中に、近くにあった寺の風景がイメージされるのである。門や階段や松の木、そして大きな本堂は幼稚園の代りになっていた建物なのである。
 子供のころは、よくものに頭をぶつけたり、転んだり倒れたりした。熱も高く出た。そのたびに、頭の中でよく足し算をしてみたりして、頭の工合をしらべたりした記憶がある。不思議な国のアリスは、どうやらその頃の子供の物語を大人がこしらえ上げたものなのである。

(2014.7.21 (日) 記)

 村山由佳訳の続き。
(お話し・尾は無しの駄ジャレ)
 「僕のは、長くて悲しいお話なのさ!」ネズミはアリスにそういうと、ため息をついた。「え、尾はナシ?」アリスは、ネズミの長くて立派な尾っぽをまじまじと見おろしながら思った。
 「こんなに長い尾っぽがあるのに、どうして尾はナシなんていうのかしらって」(50頁)
 「あんたさっき、『ぶた』って言った? それとも『ふた』?」と猫。(110頁)
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(言葉遊び)
 「マ行で始まるっていうと!、だからええと『マジカルネズミ捕り』とかぁ、『三日月』とかぁ、『むかしばなし』とかぁ、あと『めったに』とかさ――ほら、『めったやたら』っていうじゃない? けど、ねえ?『めったやたらの絵』なんて見たことある?」(128頁)

(文意ほとんど不明にさせた構文)
 公爵夫人は言った「してその教訓は―「以前の自分E、あるいは以前そうであったかもしれない自分E’はかつて他人の目には別のものとして映ったであろう自分以外のものEではないということが他人の目に映るかもしれないもの以外のものEではないのだと自分のことを思ってはならない」
 「たぶんそれ、紙にでも書いていただけると、もっとよくわかると思うんですけど」と、アリスはとてもていねいに言った。(153頁)

(物知り風の言いまちがい)
 ウミガメフウ「初めはそりゃ、国語からじゃよ。酔い方・・・とか搔き方・・・さね。それから、算数もほら、計算がいろいろにわかれているじゃろ―打算とか、ご破算とか。あとはココロガワリ算や、サルノコシカケ算だな」(164頁)
 addition(足し算)≠「ambition」、subtraction(引き算)≠「distraction」(放心)、multiplication(掛け算)≠「uglification」(酷くする)、division(割り算)≠derision(嘲笑)

(単なる駄ジャレ)―訳文は原文とはやや異なる
 「厳しかったんじゃろ、あの古典の先生、なんでも生徒はコテンぱんにやられたとか」(165頁)

(以下も駄ジャレ―原文未確認)
・「誰がそんなことゆったよ!ほっとけよ!」「え、結った?ほどけ?」とアリス(52頁)
・「その子たちがいたのは井戸の中だったんでしょう?」「そうそう」とネムリネズミ。「野中の井戸」(127頁)
・アリスはすごく楽しくなって続けた。「お酢は人をスねさせちゃうでしょ。それにニンニクは憎々しくさせちゃうでしょう…」(152頁)
・「どうしてウミガメなのに『オトガメ』なの?」とアリスは訊いてみた。(162頁)
・「私たちのところではたぶん『靴みがき』っていうと思うけど」「だろ?海の底でだっておんなじだよ」とグリフォンはもったいぶって続けた。「それをニシンがやってくれるわけ。これがほんとのミガキ・・・ニシン、なんつって」(175頁)
・「これから旅に出ますけどと言ったら、わしゃきっと訊くぞ。『お連はイルカ?』って」
 「それ、お連れはいるか・・・って意味じゃなくて?」とアリス。(176頁)
・「じゃとすれば、癇癪というカイシャク・・・・・が間違っておるのかな」…「今のはシャレじゃ!」と王様が怒った声で言い足すと、みんながどっと笑った。(213頁)

(2014.7.23 追 記)