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959号 鳥の墜落

2014年07月24日(木)

 きょうは舞鶴若狭自動車道の開通式であった。早暁、大きな雷雨と強い雨音が何度もし、式典の始まりのときにも外はまだ天気があやしかった。しかし、天気は速い力でだんだん晴れとなり、通り初めのときには周囲の夏の風景が実によかった。高速道からはこれまで経験のない新しい角度と高い視点がえられるので、村落や湖の姿が生々として見える。そして午後の湖畔でのイベントのときにはもう日が強く照って、テントを巡っていると体中が暑くなり真夏の行事になった。

 家に戻って一休みをし、ずいぶんと暑いので、西の窓と東に面した広い方の窓も網戸にして明け放し、涼風を通しながら新聞を読みはじめた。

 そうするうちに、いつもこのあたりに騒いでいるムクドリのにぎやかな声が急にした。そしてドンと固いものが何かにぶつかるような音がした。軒下にあるハシゴか、花器か、何か道具が倒れたのかと思い窓からのぞいた。すると窓下の敷石の上に、一羽のムクドリが静物のようにじっとしている。左側の羽根がやや毛羽立って乱れており、なぜか嘴をあけたままにしている。動きはほとんどなくとも、生きている鳥であることがわかる。どうも争っているうちに物に当ったらしい。窓や網戸にぶつかった気配ではなかったので、軒先の柱か壁に衝突してしまったのではないかと想像した。両脚で立ってはいるので、まだ生きてはいるのである。しかし、ぶつかった音があまりに大きかったのと、鳥がだんだん嘴を広げるのを大きくしてきたので、これは長持ちできず具合がわるいなと感じた。

 また机に向って10分ほど過ぎた。気になって窓辺に寄ると、先ほどの立っている脚の位置は変っていないのだが、首をややゆっくり樹木の方に向けて何度か動かし始めている。反対の家の側へは首を向けることができぬのかもしれない。そのまま見ていると、こちらの思惑に応えて、右側の方にも首をゆっくり振りはじめた。だが、いぜん嘴を大きく開けたままであり、眼もぬれたように光っている。

 くわしく観察するため、もう少し網窓に顔を近づけると、鳥もようやく周囲に警戒できる体力と余裕ができたのか、一瞬身構えて前へ向ってゆっくり跳びはね、敷石と芝生の段差のところでしばらく躊躇したあと、そこにトンと下りた。さらにトントンとすぐ先のツツジの繁みの下に入り込んだ。この鳥は暗がりの場所を好んだり休んだりするタイプの鳥ではない。垣根を通り抜けて芝生の広がったところに再び跳ねながら現われるかと期待した。しかしその気配はないので、ここが最後の場所かと思った。

 低いツツジの垣根の上に、垂れかかって桜の枝葉が揺れており、四時ごろの夏らしい明るい陽の光がさしこんでいる。

 五分ほどした後、またこのムクドリのもぐり込んだ辺りを眺めていたところ、急に鳥が現われてピョンピョンと塀に向って動きだす姿が目に入った。先ほどの姿よりもやや体が大きくなったように感じたが、同じ鳥としか思えなかった。すこし元気がでたのかと眺めていた。しかし、人の背丈に近い塀垣の高さをどうにかできるものなのか、ここで万事休すかと見ていたが、ひょいと塀の瓦の上に飛び移り、その上をしばらく何歩か走り出して止った。さてようやくの動きもここまでかと思っていたところ、そこから飛んでいき木々が重なり光の濃淡があざやかな緑の中に消えていった。

(2014.7.20 夕方 記)