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イッセイエッセイ

947号 バイク・ヘイブン

2014年06月02日(月)

 オランダでもオーストリーでも大都市内の交通は、自転車が一番に勢力をもっている。自転車専用の道は幅広く立派に整備されており、混んでもいないので、どの自転車もすごいスピードで走り過ぎる。だから旅行ガイドの日本人はバスから下りるときに、たえず自動車ではなく自転車に注意するよう言う。そして実際にその通りなのである。
 そして次に有力なのが市街電車である。大通りはもとより、細道にも坂道にもちゃんとレールが敷かれている。電車道も一両、自動車も一方通行で一台しか走れないような幅の狭い道もあるのだ。その結果、バスの車窓からは街中のどこを走っていても、たえず市内電車の姿が視野の中に入るのである。
 電車の次に有力なのは自動車であるが、日本と比較すれば有力というような言葉は使えないほどのスピードである。古い建物がそのままだから道路上に同類が狭しと駐車しているので、一車線しか通れないところが少なくない。その上に観光用の馬車も走ったりするので、たとえばウィーンの街の四ッ辻では、自転車、市街電車、車、バス、人間が互いにクロスして、押し合いへし合いしている光景に出くわすのである。
 自転車に乗る人は若い人が多く、しかも男性も女性もすこぶる長身かつ体格がよいので、そのスピードと傍若無人によって、最も有力な乗物になっているのである。郊外に出てもこの傾向は変らないのであって、麦畑や大木の並木道に沿って整備されているゆるやかなカーブの自転車道を、すばらしい速さでサイクリングする人々の姿が遠望できるには、旅人として一種の痛快さを感じる。

(2014.5.18 記)