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イッセイエッセイ

944号 鳥と向き合う

2014年04月23日(水)

 小鳥は自分の姿形をどのように眺めて欲しいのか、という話しをする。
 写真であれ絵画であれ、だいたい鳥の姿は、横からあるいは斜め方向から描かれている図柄がほとんどだ。たまには、首をひねっていたり脚を曲げていたりする姿もある。
 曇り空の今朝、稍大きめの小鳥が庭をあちこち早脚で動く姿が目に止った。
 姿形から「ひよどり」と思ったのだが、双眼鏡で確かめるとその通りだ。鳥の仲間では、雀と同じようにきわめて地味な色合いの鳥である。腹のあたりは薄白く、残りの部分は黒灰色を帯びた羽根や胴体と言った印象なのである。もう少し彩色が鮮やかであれば、方向の良し悪しはともかくだが、この鳥の運命もだいぶ変ったはずである。
 しかしこの鳥が、双眼鏡の輪の中に向って、偶然大きく正面に体を向けたとき、その目立たぬ印象を俄然一変させたのである。
 頭部から首、胸部、腹部に至るまで、地味と思っていた白と黒の配合が、見事に対照形の姿で一定の曲線と斑点パターンを変化し、それは歌舞伎によく見るまるで荒事の見得をきる役者の力強い顔形になっているのにおどろいた。鳥も正面から間近かに見ると、化粧した人間に近い表情をみせるのである。鳥たちの求愛が互いに横向きの姿をアピールしたり観察したりするのではない、当然のことながら正面に向き合って実行される、という当り前のことに気づいたのである。同類に対しては正面で胸を張って自己主張するというのがどうやら鳥の作戦らしいのである。

(2014.4.20 記)