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イッセイエッセイ

905号 易経について(2)続き

2014年01月14日(火)

○序卦伝下篇(三十四卦)

(1)咸(沢山咸)●○○○●●

 初めに(かん)の卦、「(たく)(さん)(かん)」の卦について説明するのである。天地が有って、しかる後に万物ができる。万物があって男と女とがある。男と女とがあって、しかる後に夫婦がある。夫婦というものが定まって父と子がある。しかる後に、上と下のきまり君と臣のきまりができた。そして礼儀が行われるようになった。男女相愛する道を説くのが咸の卦である。
 (注) 咸は聖器(さい)の上にまさかりを乗せ祈りをとじこめることにより、神の心が動く。(「常用字解」白川静から)

(2)恆(雷風恆)●●○○○●

 次に(こう)の卦、「(らい)(ふう)(こう)」の卦がある。夫婦の道は久しく継続しなければならない。変化する中に久しく変化しない道を説くのが恆の卦である。

(3)遁(天山遯)○○○○●●

 次に(とん)(遯)の卦、「(てん)(ざん)(とん)」の卦がある。世のなかの物事は、いつまでも久しくそこに止まっていることはできない。ゆえに、ある場所から自分の身が遁れ退くことを説くのが遁の卦である。

(4)大壮(雷天大壮)●●○○○○

 次に大壮(たいそう)の卦、「(らい)(てん)(たい)(そう)」の卦がある。引っ込んでいるべきときに引っ込んでいたので、雷が天の上に轟くように、盛んな勢が出て来たのである。
 司馬温公(北宋 11世紀)が、王安石の新法の害を説いて用いられず一時隠退していたが、そのうちに上下の人望が集まって、また世に出た時のようなものである。

(5)晋(火地晉)○●○●●●

 次に(しん)(晉)の卦、「()()(しん)」の卦がある。世の中の物事は盛んな勢のままいつまでもじっとしていることはできない。人望も盛んであれば必ず上へ進んで行くのである。日の出の勢で進んで昇るのである。盛んに進んで行くに就いての道を説くのが晉の卦である。

(6)明夷(地火明夷)●●●●○●

 次に明夷(めいい)の卦、「()()(めい)()」の卦がある。あまりに勢にまかせて進んで行くと、必ず傷つき失敗するところがある。太陽が地の下に没した形の卦であり、そういう場合に処する道が説いてある。

(7)家人(風火家人)○○●●○●

 次に家人(かじん)の卦、「(ふう)()()(じん)」の卦がある。外において傷をうけて敗れたる人は、必ず自分の家に引きかえして帰ってくる。家人の卦は家庭内の道を説いてある。

(8)睽(火沢睽)○●○●○○

 次に(けい)の卦、「()(たく)(けい)」の卦がある。失敗して家に帰るときは、その禍は必ず家庭にも及ぶことを免れない。睽は乖く(そむく)であり、人々の意思感情がくい違うのである。一身のうちにも一国の中にも、矛盾した考えが入り混じっていて内部が統一しないのである。こういう場合に処する道、またはこれをうまく利用する道を説いてあるのが睽の卦である。

(9)蹇(水山蹇)●○●○●●

 次に(けん)の卦、(すい)(さん)(けん)の卦がある。一家、一団が和合しないとき、必ず険阻艱難なる事が出てくる。歩いて進んで行くことができない意味であり、水山蹇の卦は、険難に処する道を説いてある。

(10)解(雷水解)●●○●○●

 次に(かい)の卦、「(らい)(すい)(かい)」の卦がある。いつまでも険阻艱難に終わるのではない。必ずそれを切り開くべき道がある。冬が終り春になり、水が解け草木の芽が出る、心がゆるやかになる等、雷水解の卦は蹇難が解消する場合に処する道を説く。

(11)損(山沢損)○●●●○○

 次に(そん)の卦、「(さん)(たく)(そん)」の卦がある。蹇難が解消して心がゆるやかになると、とかく油断し失策が出る。せっかく得たものを失うことになる。損の員は圓と同じで、手に持っているものから円くスルスル落ちることをいう。損し失うことについての道を説いている。

(注)白川静「常用字解」では、員を円鼎(かなえ)であるとして、鼎もしくは鼎に入れられている神への供え物をこわす意味ではないかと解す。
 孔子の門人に閔損(びんそん)という者あり、字は子騫(しけん)という。騫は蹇にして、子騫は歩行が不自由であったと字解に記す。孔子の弟子として徳行が顔回と並ぶ(三章先進)この閔子騫(びんしけん)について、論語の中ではそのようなことは書かれていない。むしろ費(ひ)の国の城主に任命されようとしたのを強く辞退(九年雍也)したこと、孔子のお側にいて慎み深かかったこと(十一章先進)、孔子があの人物は平常は発言しないが発言すると必ず的にあたると言われたこと、が論語には書かれている(十二章先進)。

(12)益(風雷益)○○●●●○

 次に(えき)の卦、「(ふう)(らい)(えき)」の卦がある。だんだん物を失ってゆくと気が引きしまって今度はだんだん益を得るようになる。益は皿の中へ水を入れる形の字である。
 この益と損の卦については、孔子が特に興味を持たれた卦であるといわれている。

(13) 夬(沢天夬)●○○○○○

 次に(かい)の卦、「(たく)(てん)(かい)」の卦がある。際限なく増して詰め込まれると、自然に裂けて敗られる。決潰せんとするときに処する道を説いているのが、夬の卦である。

(14)姤(天風姤)○○○○○●

 次に(こう)の卦、「(てん)(ぷう)(こう)」の卦がある。裂けて溢れたものは再び一緒になって偶う。政党などが大きくなりすぎて崩壊して別れると、別れた連中がまた一緒に偶う。偶うについての道を説くのが天風姤の卦である。

(15)萃(沢地萃)●○○●●●

 次に(すい)の卦、「(たく)()(すい)」の卦がある。物と物あるいは人と人とが相遇って、しかる後に集(聚)まる。物が集まり、人が集まるについての道を説くのが、萃の趣旨である。

(16)升(地風升)●●●○○●

 次に(しょう)の卦、「()(ふう)(しょう)」の卦がある。同志の人が集まってだんだん強く盛んになり、機会に乗じて一緒に引き連れて上へ進み昇るのが升である。

(17)困(沢水困)●○○●○●

 次に(こん)の卦、「(たく)(すい)(こん)」の卦がある。力に任せて上へ上へと昇って際限なく昇ろうとすると、必ず困窮する。困の卦は、沢の水が下がってしまって水がなくなった形の卦である。
 (注)白川静「常用字解」では、困は枠の内に木をはめて出入のできない意味で、進退にこまることになる。

(18)井(水風井)●○●○○●

 次に(せい)の卦、「(すい)(ふう)(せい)」の卦がある。上の方へ升りすぎて困窮に陥った者は、必ず下の方に引き返し、身をなるべく低い処に下げる。尽くることの無い水が湧き出るところの井戸の道を説く卦である。

(19)革(沢火革)●○○○●○

 次に(かく)の卦、「(たく)()(かく)」の卦がある。井戸のような低い処に身を下げていると、不足はないにしても、低いところにあるいろいろな煩わしいことがでてくる。ときどき奮発して改革し、うるさいものを取り除かなければならない。革新するについての道を説くのが革の卦である。
 (注)白川静「常用字解」では、革は獣の皮をひらいてなめした形、元のものとはすっかり異なるものになるので、あらたまる、あらためる、の意味となる。

(20)鼎(火風鼎)○●○○○●

 次に(てい)の卦、「()(ふう)(てい)」の卦がある。鼎をもって物を煮て、神を祭り、賢人君子を養い、旧い弊害を去り、物事を新たにするのである。

(21)震(震為雷)●●○●●○

 次に(しん)の卦、「震為雷(しんいらい)」の卦がある。震の卦は動く性能の卦であり、長男の卦であり、善く活動して天下を養うのである。
(注 現代的には意味はわかりにくい。)

(22)艮(艮為山)○●●○●●

 次に(ごん)の卦、「(ごん)()(ざん)」の卦がある。物事はいつまでも動いてばかりいることはできないのであり、艮とは止まることであり、動かざること山の如しという徳がなければならない。
(注)「常用字解」では、呪眼に会って、進もうとしても進むことができず退く人の形と記す。たとえば恨、根など。

(23)漸(風山漸)○○●○●●

 次に(ぜん)の卦、「(ふう)(ざん)(ぜん)」の卦がある。いつまでも長く動かないでいることはできない。この卦は山の上に木が生えている形であり、木は急に伸びないのであり、漸次に少しずつ進む意味の卦である。
(注)「常用字解」によれば、(ざん)は車を作るために木材を斬(切)ることをいい、そのためには順序や次第があることから、水につかってしだいに()れることを(ぜん)、のちには時間的な関係で「ようやく」の意味に用いると説明。

(24)帰妹(雷沢帰妹)●●○●○○

 次に()(まい)の卦、「(らい)(たく)()(まい)」の卦がある。漸次に進むとき、必ずどこかの然るべき落ちつくところがある。帰妹とは妹がお嫁に行って、落ちつくべき宜しき所を得るという福の卦である。
(注)「常用字解」では、帰は軍が無事帰還して儀礼をする「かえる」の意味、これが女が結婚してその家に報告する「とつぐ」の意味に使われる。
 なおしかし、この卦における妹の字の必要性について愚考するに、●○○(少女)から来るものらしいが不可思議。

(25)豊(雷火豊)●●○○●○

 次に(ほう)の卦、「(らい)()(ほう)」の卦がある。その落ちつく場所が宜しきをえるときは、必ずだんだん盛んになり大きくなる。豊の卦は、ゆたかにして大きく、そして盛大なる場合に処する道を説くのである。

(26)旅(火山旅)○●○○●●

 次に(りょ)の卦、「()(ざん)(りょ)」の卦がある。盛んな者は必ず衰え、自分の居り場所も失うようになる。流浪の旅をするについての道を説くのが旅の卦である。
 唐の玄帝などがこれに当たる、という先人の注あり。

(27)巽(巽為風)○○●○○●

 次に(そん)の卦、「(そん)()(ふう)」の卦がある。我が身を容れてくれる者がどこにもない。巽は柔順にして小さくなって、人にへり下って人の処へ入るのである。
(注)「常用字解」では、巽(そん)は神前の舞台で二人の者が並んで舞う形と説明。舞楽を献ずることを撰(せん)、選ふ(ととのう)と詩経にある。撰ぶ(えらぶ)の意味もあり、神に供える酒食を饌(せん)という、と記す。

(28)兌(兌為沢)●○○●○○

 次に()の卦、「()()(たく)」の卦がある。行き処のない人が、人に容れられて人に助けられるようになれば、悦ぶのである。悦ぶことについて道を説くのが兌の卦である。
(注)「常用字解」では、兄は祝詞を入れる器を頭上にのせて祈る人の形、その上に神気が下がることを八の形で示したのが兌(よろこぶ)である。神が乗り移りうっとりした状態を悦、説にもよろこぶという意味があると記す。

(29)渙(風水渙)○○●●○●

 次に(かん)の卦、「(ふう)(すい)(かん)」の卦がある。渙というのは離れ散ずることである。人が悦んで気が緩んで、物事に失敗し人々が離散するのである。すべて離散することについて処すべき道を説くのが渙の卦である。
(注)「常用字解」では、奐(かん)とは子が生まれるのを人が両手で取り上げている姿勢であり、子が勢いよく生まれる様子を渙然という。

(30)節(水沢節)●○●●○○

 次に(せつ)の卦、「(すい)(たく)(せつ)」の卦である。節というのは散乱し離散するのを、竹の節のように心をしっかりと引き締めることである。物事にそれぞれの極まるべきところにしっかりと極りを立てることについて説くのが節の卦である。

(31)中孚(風沢中孚)○○●●○○

 次に中孚(ちゅうふ)の卦、「(ふう)(たく)(ちゅう)()」の卦がある。心の中に堅固なるしまりがあり、物事に一定の節度があるときは、人々はこの人を信用する。自分の誠実なることを他人が信用する。中孚の卦は、誠実なる徳が他の者を感動させることを説くのである。
(注)「常用字解」では、子の上に手を加える形で、人を手で捕える意味である。

(32)小過(雷山小禍)●●○○●●

 次に小過(しょうか)の卦、「(らい)(ざん)(しょう)()」の卦がある。徳が人に信用されている者は、自分がなそうと思うことがうまく行われるのであって、人は過ぎたる事業が成就するのである。少し行きすぎても、善い事が行き過ぎているのである。近いほどほどの先見の明ならうまく事が運ぶのである。

(33)既済(水火既済)●○●○●○

 次に既済(きせい)の卦、「(すい)()()(せい)」の卦がある。人に過ぎたる才能があり、人に過ぎたる行いを為す者は、その行い志すところの事が、必ず成就するのである。

(34)未済(火水未済)○●○●○●

 次に未済(びせい)の卦、「火水未済(かすいびせい)」の卦がある。物事がうまく成就しても、その後から続々と、未だ完成されないことが永久に出てくる。未済の卦をもって易の六十四卦は終わるのである。永久に完成ということのないのが、宇宙や人間世界の情態である。
 (注)「常用字解」によれば、齊は、婦人が三本のかんざしを髪にさした形と祭卓を組合せた形、ととのえる、すむ、なる、の意味。