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イッセイエッセイ

901号 ヒルティ先生の言葉から

2013年12月25日(水)

 聖夜をむかえ、カール・ヒルティ著「眠られぬ夜のために」から以下抜すい。しかし、このように全体の文章から切り離したとき、言葉の力が減退しているのは、ヒルティの原文がいかに力強いかの証明であろう。
 「苦しい事件に出会ったときは、まず、それについて感謝(・・)に値する事柄をさがし出し、それを率直に感謝しなさい。そうすれば、心に一層安らかな気分が生じ、気持が落ち着くと、その他の事も堪えやすく思われてくる」(1月5日)

 「たとえ心のなか(・・・・)だけでも、決して人といさかいをしてはならない。これは往々、実際の争いよりもかえって心を不愉快にし、いろいろな内面不安の原因ともなる」(1月7日)

 「実際、これまでも多くの試煉は、初め予期したよりもはるかに速く、しかも奇跡的な仕方で、すべて終ってしまったのである」(2月10日)

 「目に見える事物は、本当に、それが見えている(・・・・・)とおりのもである(・・)だろうか。いわゆる「現実の」世界に関しても、われわれは、実は全くの謎と仮定の前に立っているのではなかろうか」(2月15日)

 「誤解がいつまでも続きはしない。永久に誤解されるなどということは、起るものではない」(3月5日)

 「神のみこころが直ちに明かでなく、まずそれを探さねばならない場合でも、その探すことそのことのなかにすでに祝福が宿っている」(3月12日)

 「数多く起る試煉や心労を、堪えがたい重荷と考えるか、それとも自分の生活原則を実行し修練するために、神から授けられた機会だと見るかは、ものごとの感じ方として大きな相違である。そして結局、この感じ方次第ですべてが決まるのである」(3月13日)

 「あなたはいたずらに心配をしたり、いろいろ将来の計画を立てたりして、そのために、最もよい仕事の時間を多くつぶすことは全くいらない(・・・・・・)」(3月15日)

 「また他人の攻撃をほとんど気にとめず、たいていそれにただ受動的に抵抗するにとどめるという習慣を養った」(3月20日)

 「人生の重大な別れ目においては、つねにまず敢行(・・)することが大切である。そうすれば、おのずから()が生じ、最後に、その行為が正しかったという洞察(・・)が与えられる」(4月29日)

 「勇気はつねにいくらか努力すればしばらく持ちつづけられる一種の気分(・・)であり、やがてそのうちに助けも与えられ、事情が好転することになる。戦争もその通りである。人生は戦争とよく似たところがあって、同じような戦術的原理に従っていとなまれるものである」(6月15日)

 「精神的な戦いにおいて、われわれは決して中立にとどまってはならない。しかし、敵に対して好意をよせ、理解を持つことは、ほとんどいつでもなしうることである」(6月29日)

 「むしろわれわれはすべての勤勉と才能とを真剣に活用しなければならない。・・・そうすれば、何も吹聴などしなくても、万事がうまくはかどる。それでもなお犯す外的失敗さえ、われわれに有益なものに変わる。もしこのことが信じられないなら、自分でためして(・・・・)みるがよい」(7月24日)

 「幸福と名誉とはいわば女性である。彼女たちは、彼女たちを追いかけないで、むしろいくらか冷淡に扱う人を求める」(7月28日)

 「人はいつもただ善い事をしよう(・・・・・・・)と心がけるべきである。考え(・・)がその方に向けられていれば、つねにその機会は見つかる。このようにすれば人生はたいへん楽になる。とくに逆境にある時はそうである。また順境においても、それらに守られて軽はずみや浅薄に陥らないですむ」(8月15日)

 「人間の心の最も不幸な状態は、いわゆる懐疑主義であって、これは結局、一切のものを疑うようになるのである」(8月22日)

 「心に起る善への促しも、悪へのいざないも、たいてい刹那的な閃きである」(11月10日)

 「私もまた生涯中にしばしば、憂いの霊の訪れをうけて、今にも来そうな禍いについて空想をたくましくし、それに迷わされたことがあるが、そのような禍いは実際には怒らないか、起っても凌ぎやすいものであった。時には、このような禍いをのがれようとする試みが、禍いそのものよりも、かえって結果において悪いこともあった」(11月20日)

 「克服すること、つまり、この人生においてあらゆる悪いことや醜いことに敵対してあくまでも勝利者でいること、これこそ人生の真のモットーである。しかし、これは、すべてのことを軽く受け取ったり、できるだけ戦いをさけたり、ごまかしたり、ついにはストア流の無感動(アタラクシー)で敵におじぎをし、全面的に敵の進撃をゆるしたりするという意味ではない」(11月29日)
 カール・ヒルティ(草間平作・大和邦太郎訳)「眠られぬ夜のために 1901年」から

(2013.12.23 記)