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イッセイエッセイ

885号 椎の実

2013年11月15日(金)

 女性がさかんに木の枝をゆすっている。高い土手になった緑道が、ちょうど道に面して傾斜しているところに三メートルほどの常緑樹があるのである。この木の横枝に手をかけて、うしろ姿なのだが、若い母親が木をゆさゆさと動かしている。その下で幼い子が頭に手をやって、上から落ちて来るものに痛い痛いと跳びはねはしゃいでいる。その落ちてくるところからすこし離れて、祖母らしき人が、「もういい加減によしてはどお」、と赤ん坊を乗せた手押車を支えながら言う。
 ちょうどそこへ、犬を連れたかなり年配の男性が近寄ってきて、「それは何ですか」と好奇心をゆっくりした声にかえて、聞きはじめる。
 「椎の実ですよ、食べれますよ」、枝に手をかけたまま若い女性は直截に答える。
 玉葱の畝をつくろうと思い、鍬を手に緑道の階段に向っていたときの光景であったが、椎の実をめぐるその場の展開がその後どうなったのかは知らない。

(2013.11.3 記)