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イッセイエッセイ

884号 小春の落葉

2013年11月14日(木)

 「えほんをかしてください」
 大きな本を脇に持って、図書館の貸出の女性に兄の方が言う。
 「トミちゃんも」
 とさらに小さい妹の方に向って言う。
 「はい」とカウンターの女性が、いつもは無表情につとめている顏を笑顔にかえて応える。

 当方は、「現代中国の父 鄧小平」、「ギリシア語のかたち」、「エピクテトス 人生談義」、「哲学以前の心」(中谷宇吉郎)と、まるで方面のばらばらな書物をかしてもらう。
 外へ出れば、ややうすく陽のさす小春の日である。図書館と駐車場の間の舗道に置かれたベンチの下のところに、花みずきと思われる落葉が吹かれて集まっており、真っ赤な表面と紅色の裏葉とが微妙に重なり合って、まるで花のような鮮やかさと明るさである。

(2013.11.9 記)