西川一誠後援会サイト

イッセイエッセイ詳細

イッセイエッセイ

861号 雑想(6)

2013年09月08日(日)

(それほんまけえ)
 自分自身で考え、自分の能力すべてで発言しているかどうか、それがよくわからない議論をすると、京都学派の先輩たちから、「それほんまけえ」と問いかけられて鍛えられた。こういう学者の方の話が「交遊抄」(千葉喬三 岡山・就美学園理事長)に出ている(2013.8.2)。単なる辻つまの合った話にすぎないのか、事柄を表面的に説明しているだけの話なのか、こういう違いは仕事上一番大事なことである。自分が腑に落ちた話は、筋が通らなくてもそれで十分なのである。

(善循環ホルモン)
 最近「神経経済学」という分野があるようだ。ポール・J・ザックのThe Moral Molecule「経済は競争では繁栄しない」という本は、競争を前提の戦略をベースにするのではなく、国民が生活体験を通して信頼と共感を高めてゆくボトムアップ型の善循環社会が重要とする考えらしい(2013.9.1「よみうり堂」書評から)。ちなみにオキシトシンというホルモンは共感や、道徳的行動を促し、テストステロンは攻撃性、暴力、競争を高める働きがあるという。
 では、先にシステムを変えて善玉ホルモンを促進する方法をとるのか、それともその逆か。

(戦後は終っていない)
 第二次大戦は人類史上きわめて特殊な戦争であった。国益の衝突ではなく、道義的な主張が全面的に争われた戦争であった。さらに特殊だったのは、これを最後に国家間の戦争がなくなり、戦後の状況を次の戦争により帳消しにする機会が失われた。日本やドイツは、戦争裁判による一種の国際司法取引によってイデオロギー戦争にも敗れたままになっている。さらに東西冷戦の終結が、中韓による戦争犯罪の歴史問題を持ち出しが起ってきた。(山崎正和氏の「時流眺望」、および御厨貴氏との対談「歴史問題を乗り越えるために」から。いずれも「潮 9月号」)
 侵略批判、植民地支配、戦争犯罪、これに対して、占領の早期解除、現行憲法の制定、戦後の経済成長、この対照項目が見えないバランスシートの天秤上に記されているということか。これからは、自国の立場の明確な発信、中韓をのぞくアジア・アフリカ諸国との迂回外交などを対談では提案している。

(作家とふるさと)
 今年は野呂(のろ)邦暢(くにのぶ)という芥川賞作家の没後三十三年(三十三回忌)にあたるようだ。昭和55年(1980年)に42歳で早逝している。どのような作家だったのかはよく知らないが、地元の長崎県諫早市でひっそり暮らした人らしい。毎日新聞の「今日の本棚」(9月1日)には、青来(せいらい)有一・選「この3冊」として、①「諫早菖蒲日記」、②「夕暮の緑の光」、③「野呂邦暢・長谷川修往復書簡集」があがっている。この中の①の「日記」を借りて読んでみる。

(2013.9.1日曜日に記)