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イッセイエッセイ

830号 自由主義・保守主義・全体主義の三角形

2013年07月06日(土)

 オーストリア学派の系譜をもつノーベル経済学受賞者、フリードリッヒ・ハイエク(1899-1992)は、ケインズに対する自信をもった好敵手であった。ケインズの「一般理論」が世に出たときに直ちに批判しなかったことを、後に後悔したと伝えられているが、それは自分の批判によってケインズが簡単に意見を変えてしまうことをおそれた為らしい。
 ハイエクは生涯にわたり多方面の分野で先鋭的な主張を行ったため、時によってはシカゴ学派の市場原理主義の代表と呼ばれたり、社会主義に対決した保守主義者とみられたりしたようだ。しかしハイエクの拠って立つ思想は、経済理論と法思想の結びつきを重視した自由主義者であり、反全体主義・反社会主義者だというのがどうやら正しい。さらに特定集団が求める強制的な福祉国家政策、また官僚主義的な行政国家による設計主義の政策にも批判的であった。ここでの自由主義の意味するところは、先人の生み出してきた結果を尊重しながら、予期せざる変化への勇気をもち(つまり保守主義ではない)、「自生的秩序」を信頼し、信念の強制を嫌う懐疑主義者でもあるということだ。
 いずれにしても社会主義国家が崩壊する五十年前に、社会主義国家の行う計画経済は崩壊すると予言したハイエクの先見の明は記憶すべきことである。
 (「ハイエク-『保守』との訣別」 楠茂樹・楠美佐子著 2013年 中央公論社から)

(2013.7.1 記)