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イッセイエッセイ

818号 虫めがね

2013年05月23日(木)

 きょうの新聞漫画を見て面白く思い、笑った。
 おむかいのおじいちゃんが、わりばしでけむしをつまんでいるところを、主人公の童女「ひなちゃん」が見つけ、けむしをたべるところだったと思い込み、「あわわわわ」となってママのところに逃げ帰る8コマである。
 おじいちゃんが庭木の毛虫を退治していたのである。
 ちょうど昨日は朝の天気がよく、鉢で育てている密柑の木の若葉を観察してみると、まさにあちこちで毛虫の季節だと思ったのである。小さい数ミリほどの黒縞の毛虫に気づき駆除したのである。漫画家は、ウソかマコトかわからないような材料をさがして、子供の物の見方を面白い筋にするものである。
 いまごろの若葉は、毎日びっくりするほどに成長するが、同時に毛虫の類も必ずやって来て、小さいのをうっかり見逃せばアッという間に葉っぱを全滅状態にする。
 密柑の毛虫は一匹見つかると、しばらくの間にこちらの眼が馴れてきてまた数匹見つけられる。そして又時間をかけるうちに十匹近くになり、終りがないのである。漫画のように割箸でつまむのだが、いまは余りに小さいのでつまみにくい。類似の小ささの食べものは食卓上には出て来ないのである。毛虫はつまんで離そうとすると一大事とばかり葉に執着するので、一回では引き離せないことが多い。目にはよくみえない位の小さな黄色い角のようなものを出して抵抗するで、敵としては心憎いのである。
 畠の野菜苗を荒らす夏の害虫は、毎年いま頃から急に増えてくる。毛虫の類はまだつかまえられても、瓜類につく黄色のウリバエなどは、羽があって近づくだけで利巧に飛ぶので、全く手がつけられない。わが畠では薬を撒かないものだから、虫に食べられる量に苗の成長がまさることを期待するより他はない。きのう初めて収穫したキャベツの一球などは、外から見えなくてもナメクジが例外なく粘り強く侵入している。しかし野菜の成長前の食害ではなく洗えばすむので許せる範囲なのである。
 もう数週間すれば、トマトやキュウリの成長も腰の高さほどに近づくだろうが、ある日突然にクシャリと枯れてしまうことがある。これは育てる側としては最もガッカリさせられる事件なのだ。地中にいる根切り蟲という説や根元に集まるダンゴムシ、あるいは黄金虫の幼虫のイモ虫という疑いがあっても、自分としてはどの虫なのか確かめられず犯人は見つけられないのである。
 虫を使ってはじめて新しい料理を作ったという有名なシェフのことが数日前に新聞に出ていた。毎朝一匹のナメクジを健康のために食したという坊さんの作家のことを昔聞いたことがあるが、蟲のご馳走は鳥や蜘蛛に任せておくことが一番かと思う。

(2013.5.19 Sun. 記)