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イッセイエッセイ

817号 鰈一枚焼き加減

2013年05月23日(木)

 福井の海産物であるカレイは名実ともに福井のブランドであり、そのこと自体には何の問題もない。しかし、世の中を広く眺めた場合、所変われば食べ物の料理や売出し方について様々に違いがあるのである。
 昨日は全日空の小松~羽田便に乗り、五月号の機内誌(ANA)の頁をめくった。スペインとフランス国境の「バスク地方」の旅行特集が出ていた。この地方は、ピレネー山脈がビスケー湾に落ち込むところの山がちの地域であり、説明によると雨が多くて湿った気候であり、その中の写真の一つには高い山に残雪がある。海岸は断崖の間に浜辺がある越前海岸や若狭湾に気候や地形の印象が似ている。しかもバスクは海の幸に恵まれた地方のようであり、とくにカレイが名産であるという説明である。
 そこでこのカレイの話になるのだが、バスク地方のレストランは、カレイの焼物が得意の売り物であり、店の入口の横に大きな焼炉をもった調理場がある。料理は分業であり、地元の漁師から直接買った魚をレストランでは、魚の捌き人、焼き職人、盛り付け係、テーブル係に分けて料理を客に供する。日本のように、メニューの一つとして単にカレイの煮付けあるいは焼き身を順に出すというような大雑把さではないようだ。
 レストランの説明では焼き方にかなりうるさい語りがあり、カレイの上側と海底に向いた下側では肉質や味わいが別だとか、目球の周りや顎など何処どこの部分はよく身が動くので食感がちがって美味しいとか、焼き方の薀蓄がある。焼き網は焼き鳥屋の網台のようなものから、魚の形をした平たい籠状のものまである。そしてこの焼きたてのカレイに果汁をしぼり、地場の野菜やサラダを組み合わせて料理を仕上げる。

(2013.5.16  記)

 この旅行記のようにバスク地方のカレイとその料理法が、繊細、デリケートなものとは思いにくいのであるが、案内記事を書いている日本人は、そのように強調してグルメ的な解説にしている。
 六、七年前に夏休みの旅行をした際、ロンドンではちょうど鮃の美味しい季節だと案内人から説明をうけた。ドーバー海峡でとれる舌鮃つまりドーバー・ソールが、食べ頃でありムニエルがお試しということであった。自由行動の最終日であったので、娘と二人でその店に行き注文したのだが、大きいヒラメがどんと二皿それだけ大味に出てきた。周りのお客も何となく珍しく眺めており、場違いのご馳走を目の前に全く困ったのである。なかなか旅行特集のようには行かないのではないかと思うのである。
 バスクの魚介類やカレイも実際訪れて味わってみなければ始まらないところがある。しかし福井の名産物の方も、単にうまいとだけ言っていては詰まらないのであって、解説と尤もらしさというものがもう少しあってよい訳である。

(2013.5.19 記)