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イッセイエッセイ

789号 英語教育の壁

2013年03月17日(日)

 Out with old, In with new!
 この文の意味をジーニアス辞典で調べようとした場合、単語のoutの項目にもinのところにも、直接の手がかりはない。ようやく前置詞withの最末のところに、「up,down,in,outなどの方向の副詞の後で、命令的に」使う、という説明がある。
 Down with the tyrant 暴君を倒せ/Up with the anchor 錨を上げろ/Out with him 彼を追い出せ/In with it それを中に入れろ/Away with it それを取り除け/Off with your coat コートを脱ぎなさい。
 この用例から推量できることは、標記の短文は、古いものは外へ、新しいものを中へ、あるいは古きを捨て、新しきを取る、というような意味になる。これは聖書のNor does anyone pour new wine into used wineskins.「新しい酒を古い革袋に入れる」という意味にも通じる。
 さてこのout with old, in with newは、実際の英会話ではすばらしく速く話されるので、ほとんど聴き分けることができない。解説をされた後にさらに注意して聴いてもよく聴き取れない(きょうの昼食時の「ラジオ英会話」)。
 一つひとつの単語は易しく、全く何も困難なところはない。しかしながら、音声変化が大きくしかも速く発語される、文法的にみて極端な省略形をとっていること、文の意味内容が取りにくいことなど、幾つもの壁があって、耳から音がこぼれてしまうのである。つまり音の壁、文法(文章)の壁、意味の壁が、英文の聴き取りのじゃまをする典型例である。
 しかもこれらの壁を全てクリアしても、いざこの文をスピードをもって暗唱しようとする段には、out・inとold・newがつい前後に混乱し、うまく口に出すことができない。
 そこで色々と試行実験をしてみる。
 いらないもの(old)を外(out)に出し、いるもの(new)を内(in)に入れる、というイメージを描いて文を再現しようとしてもスムーズには成功しない。なぜなら、この英文が日本語の主語・述語とは逆のoutにoldという語順であり、日本語では「鬼は外」のようにモノを移動させるイメージで文を作ることが多いこと、など英語との違いに難しさがあるのかと思う。
 そこで、初めからoutにoldがあり(出てしまっている)、inにnewがある(入ってしまっている)、つまり家の外にガラクタが出ており、家の中には新しい家具がすでに入っているという、モノが動かないイメージをはっきり持って、上記の文を速く暗唱してみるとき、はじめて成功に近づく。このように、日本人が思い描きやすいイメージとネイティブが普通に描いているイメージの違いからくる壁もまた、聴き取りの障害になっているのではないかと思われる。
 いずれにしても大事なことは、こうした様々な理解をさまたげる「壁」のことを意識しながら、全体として英語に数多くたゆまず馴れさせることが、これらの壁を自然に乗り越える近道になるのではないだろうか。

(2013.3.9 記)