西川一誠後援会サイト

イッセイエッセイ詳細

イッセイエッセイ

777号 隕石と小鳥

2013年02月23日(土)

 2月15日午前9時20分ごろ、ロシアのウラル地方チェリャビンスク州付近に、青空のかなたから火の玉のような閃光が近づき、数回の爆発音を発して地上に落下した。ロシアの国防省や非常事態省の発表では、この物体は隕石とみられ大気圏に突入して爆発し、衝撃波により窓ガラス破片などが飛び散り1000人を超える住民がけがをしたということである(きのう16日朝刊の一面記事)。軌道を事前予測できるためには、天体の直径が45メートル程度を超えないと困難であるらしい(国立天文台、日本スペースガード協会)。
 また今日2月17日の日曜朝刊(毎日、産経)によれば、ロシアに落下した隕石は、直径17メートル、重量1万トン、放出エネルギーは500キロトン(広島原爆の30倍と報道されているが意味は不明)ということである(NASA)。またこの新聞によると、隕石は火星と木星の間にある小惑星群から飛来したものであり、時速6万5千キロ(NASA)、チェバルクリ湖の氷面に直径8mの穴が見つかったと報じている。
 同じく今日の新聞には、別にこんどは我が地球にぶつからんばかりに最接近した小惑星のことが出ており、日本時間で16日午前4時25分ごろ地球に最も近づき、地表から地球2個分ほどの距離すなわち高度2万7700km(気象衛星ひまわりより内側)のところを南から北に毎秒7.8kmで通過したとの報告である。小惑星の大きさは直径45メートル、重量13万トンと推計されている。次のこの同じ小惑星の最接近は2046年であり、今回よりも36倍遠い地球から100万キロに近づくということである(毎日新聞)。
 隕石と小惑星の飛行速度を筆算をして換算してみたところ、なぜか落下した隕石の方が、無事に通過した小惑星より2倍以上速かったことになる。なお隕石と小惑星は飛行方向が全くことなり、天文学上の相互の因果関係はないということのようだ。
 中国の書「列子」には、天地が崩れ落ちて来ると心配した杞人の憂いの話しが出てくる。ギリシアの物語にも、天から落ちてきた亀の甲羅の一撃をうけて予言通り落命する王様の話しがあったと思う。

 身近な地上のことに目を移すと、きのうは終日にわたり粉雪が降りしきり、降っていると思うと又すぐ青空が見えて日が射し、又しばらくすると雪が降り出し風が吹いて吹雪いたりもした。こういう冬とも春とも分からぬ空模様の目まぐるしい交代が、十回以上も繰り返される天気であったので、その様子を面白く窓外に観察した。
 けさの朝食のとき「きのうの夜も又降ったのかしらね」と家人が言う。昨日には除雪をして雪の積っていなかった勝手口から玄関のところが、また今朝は白くなっているらしいのである。
 きょうはきのうとことなり静かな天気であり、日は射していないものの、灰色の雲がきわめてうすく広がっている。
 窓から見える庭の紅葉の枝は、この一、二週間でやや紅色を帯び、夏椿は小さい芽が遠くからもわかるような季節になった。なるほどと思って廊下に出て梅の枝に目をこらすと、雪をかぶった枝々にはもっとはっきりした赤味のかかった花の芽が付いている。
 しばらくして又窓の外を見てふと、庭でいちばん高さの目だつ細い枝のサルスベリの梢に、生きものがいるのに気づいた。レンズを通してのぞいてみると、それは鳥であり、ジョウビタキのようだ。正面に向いている時はまん丸のぬいぐるみに長い尾が付いた、まるで玩具のような姿形である。横を向くとそこには黄色と橙茶色の組み合わさった美しい小鳥のシルエットができる。まるで秋のモズのように堂々とかなり長い時間止まっていたが、鳥は急に下の方の樹に移った。気がつかなかったが、そこにはもう一羽の友鳥がいて、これは羽根の更に鮮やかな色からみてどうやら雄鳥らしい。狭い視野の中で双方に眼を移しているうちに、小鳥は飛んでいってしまったのか両方ともわからないまま、見えなくなった。
 地軸は天地創造の際に偶然の都合で傾いて出来上り、そのせいなのだが四季があり、冬があって雪も降る。隕石も小惑星もそれぞれの運命に従って運動をし、しかるべき時が来れば消滅してゆく。地球に飛来した隕石の一つの破片にも相応の定めがあり、雪中の木々の頂きにある一羽の小鳥にも、必然と自由らしきものの融合が感じられる。
 宇宙が誕生したのも、地球がうまれたのも、人間が生命をえて我々がこうして今に生活しているのも、いわば奇跡の奇跡である。天文学的ならぬ宇宙論的な確率のうちにあり、それをこの自分が生きながら知ることができたことに感謝しなければならない。

(2013.2.17日曜日の朝、記)