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イッセイエッセイ

774号 社説の文型について

2013年02月15日(金)

 今日は「建国記念の日」であり、一日ぽっかり余裕のできた気分の日である。庭には雪がうすく積っているが、あたりに春先の気分が漂いはじめている。この一、二週間あまり、名も知られていない春を待つ風習めいた行事や祭りが、県内の各地で催されて新聞にも出ている。しかしこの季節はまた、受験生にとってはいちばん大事な数週間であろう。
 さてこうして今朝はやや落ち着いた気分になって、新聞各紙を一覧してみた。内閣支持率が70%台になった、という世論調査なども報じられている(読売新聞)。
 そして各紙の社説をざっと見てみたところ、今朝の気持とはうらはらに、あまり穏やかな表現がそこには並んでいない。

 「政府の役割を見失うな」―官民ファンド…(社説の要旨、以下同じ)古い規制や制度を温存したまま、特定産業やファンドに資金を投入するのは危険であり、官中心の連携ではなく、もっと民間同士の競争を促す対策をとるべし(朝日新聞)
 「働く人に希望を見せよ」―13年春闘…経営側は非正規社員の待遇を改善すべき。業績を伸ばしている企業は内部留保を賃金上昇に回し、働く人の希望を実感させてほしい(毎日新聞)
 「攻めの戦略で自由化に備えよ」―農業改革…補助金漬けの農政を拡大することなく農業ビジネス、農協改革に切り込み、TPPに備えることが必要である(読売新聞)
 「業界寄りといわれるな」―電力制度改革…新政権のエネルギー政策の方向が見えてこないのが気がかり。送配電分社化、小売自由化、再生エネ普及など、公正な電気事業法の改正に後ずさりしてはならない(中日新聞)
 「同意人事を政争の具にするな」…国会の同意人事が事前報道されて、同意を拒否する民主党の旧態はやめてもらいたい、慨嘆に堪えない(日経新聞)
 「対策先送りは許されぬ」―中国大気汚染…「PM2.5」の国内の観測体制が不十分と言わざるを得ない。在中国の日本人の健康相談を行うべき。「中国政府はガソリンの品質向上などに乗り出したが、環境対策を怠れば、つけは国民に回り、経済成長も制約することを認識してほしい」、「日本は公害問題を経験した国として、環境分野の技術協力を促進すべきだ」(毎日新聞)

 今日の社説の他の表題をすべて挙げれば、「安定供給の実現を大前提に―電力規制改革」(読売)、「トップの技を地域にも―スポーツ予算」(朝日)、「全員の所信聴取が必要だ―原子力規制委」(産経)、「政府自らが祝ってほしい―建国記念の日」(同)、「ともに考え続けたい―どうする核のゴミ」(中日)、「アラブの安定へ国造りを粘り強く支えよ」(日経)である。
 ここでわかるように、紹介した社説の表題は、多くが命令形の文型をとっていることである。
 こうした表題やその前提となる社説の論調が、いつ頃から増え出したのかであるが、それは最近のことであるように感じている。あるいは論説の主張はそれほど変化していないのかもしれないが、ともかく表題は命令調になって、気の立った口調となって来ているのは確かである。
 世の中としてはこの節、どうしても社説が命令形にならざるをえない問題もあると思う。又そういう問題がだんだん増えているのかもしれないとも思う。しかしある一日の各紙社説の半分以上が、文法的に命令形になっているのは、やや調子が高きにすぎるとは言えないだろうか。そして実際に文章を読んでみても、どの社説も内容としてそれほどの切迫感ではないのである。
 新聞が相手方として考えるべきは、政治的・社会的にみては国民各界階層、政府(政治家)、企業、団体、諸外国など、経済的にみれば読者、顧客、広告主等となるであろうが、このように社説が激した題を掲げて語りかけている相手方は、いったい何処の誰なのであろうか。たまたま今日の祝日の新聞を読んで、こうした気分を感じたのである。
 「日刊県民福井」連載の漫画「おーい栗之助」(森栗丸作)の今日は、のんびり姿のラッコらしき動物が、青い水面を気持よく空に向って浮んでいる四コマの画面である。絵の姿は説明できないが書かれている言葉はコマ順に、①「美しい日本。プカーリ」、②「強い日本。プカプカ」、③「今日は建国記念の日。祝日。そして明日は、」、④「新聞休刊日。」
 窓外に目をやると、ぼたん雪に近い雪片がつぎつぎとやや斜めに落ちてゆく。こちらは青ならぬ白の世界である。

(2013.2.11 記)