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イッセイエッセイ

748号 視野をさえぎるもの

2012年12月01日(土)

 人間は水平な視点で生活しているから、目を遮るものに影響される。したがって、平野において周りの平たい田畑は、建物や村々のたたずまいに遮られるので、田野の広がりを大きくは感じない。しかし実際に上空からみると、建物や村落が占めている面積はごくわずかであり、ほとんどが田圃や河川や丘陵地であることがわかる。
 最近は中心の市街地でも、建物が取壊されて空地や駐車場になり見通しがよくなり、まったく新しい視角や景色が生まれている。
 広い地上にある造作物は、視野をさまたげ邪魔するものである。よほどその姿や美しさにみずから責任をもたなければ、人々の視線をさえぎり、人の目をよごすことになる。終戦の頃に人々が清々と感じたという体験を読むことがある。これは心理的に解かれたという気分のみならず、戦災によって地上の物が失せて大空が広がり、世の眺めが明らかになったことも一因ではないかと思う。

(2012.11.23 記)