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イッセイエッセイ

740号 天一一代(藤山新太郎著 NTT出版2012年)

2012年10月21日(日)

 数日前(10月14日)に奇術師の藤山新太郎さんと懇談する機会があった。西洋奇術を日本に紹介したエンタメ王の松旭斎天一(1853-1912年)が福井市の生まれであることから、今年5月に大名町ロータリーの福井銀行の角に石碑も建てられ、この夏は没後100年を記念して世界奇術大会も行われた。
 藤山さんも天一翁の縁で福井に来県される機会もふえているのであるが、先般は市内の春山小学校でも公演をされたようである。その折に不登校の児童が奇術が見られるというので、例になく登校して奇術の見学をしたらしいのである。そして大変に興味をもって、これまで学校での出来事はほとんど口に出さなかったこの子が、帰宅して珍しくその当日の奇術の面白かった様子を家族に話したというのである。このことを親御さんがよろこび、藤山さんに感謝の手紙を出したというのが話の大略である(多少聞きちがえたところがあるかもしれないが)。
 今はパソコンやゲーム機の時代であるが、自分も子供の頃の一時期、手品に関心をもったことがあるので、このお話しはさもありなんと感じたのである。トランプカードを片手や両方の手で扇状にさっと丸く開いたり、掌から腕の内側に向けてカードを平たくドミノ倒しのように並べたりする真似をよくして遊んだものである。西部劇の映画では、酒場でのギャンブラーのリシャッフルの手つきなどもじっと眺めたりもした。お正月のこたつの遊びの一つにも手品があった。
 奇術がいまでも子供の興味のある遊戯であるならば、教育の場でも何か役に立てることがあるかもしれない。
 最近藤山氏は、「天一一代」という松旭斎天一の伝記を、専門の立場から、技術や心理からの観察も加えて面白い読物として出版している。

(2012.10.16 記)