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739号 調印の階段

2012年10月21日(日)

 昭和20年代から30年代にかけて、重光葵(しげみつまもる)という政治家の名前は誰もが知っていて、そして立派な政治家だと大人たちが言っていたことを憶えている。
 「調印の階段」(PHP研究所 2012年8月)を著した植松三十里さんにお会いした際、この子供のときの体験を話した。そうしたところ、重光は戦前また戦後の一時期は有名であったが、それ以降は不思議なことに急に忘れられてしまった、それ故にこの伝記的小説を書いたのだと語られた。
 重光はこの小説にもあるように、昭和20年9月2日、アメリカ海軍のミズーリ号艦上で降伏文書にサインをするという不名誉な仕事をみずから引き請けた。
 その日の朝、重光は「願わくは御国の末の栄え行き 我が名さげすむ人の多きを」という歌を詠んだと小説にある。
 連合軍との降伏文書が今はどこに保管されているのか知らぬが、以前は狸穴の外務省別館に展示されていた。35年ほど前に実物を見た印象としては、この歴史的な調印文書は畳半分くらいの大部なもので、surrenderという文字が大きく書かれていたように思う。

(2012.10.16 記)