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イッセイエッセイ

722号 ゆるい結び

2012年06月30日(土)

 絹莢は豆の仲間であり、人の腰の高さまで成長した後は、自分でようやく立ち上ることができ、さらに人の背近くまで伸びる。それまでは直ぐに倒れ込んでしまうので、支柱を使って周囲を長方形にヒモで囲ってやる必要がある。
 胡瓜ほどの強い支えとネットがいるわけではないので、2mほどの古い竹を十本余り向い合せにし、一定間隔を置いて畝に差し込んで立てる。縄を竹のところで結び横に張り、囲いを作るのである。支柱の竹棹そのものは深く土の中に入らないため、ぐらぐらしており、この縄と竹との造作はしっかりしていない。
 絹莢の背丈がさらに上に伸びて不安定になり、傾きはじめて柵全体が一緒にゆがんでくる。先日のような強い風が吹くと倒壊寸前になり、だらしない形のままに、別の斜めの支えを外側から追加しなくてはならない。
 もう少し藁縄の結び方を体得してあればよいのだが、我流でしかできないものだから、ともかく結び方がゆるく、話しにならない締り具合なのである。
 何週間か毎日のように収穫をしているうちに、この香ばしい味の豆科の植物も、何日か前から葉に白い斑点が広がり出した。実も急にとれなくなり、絹莢の季節は終りをむかえることになる。
 そこで今日は、この柵をこわす仕事をした。
 いざ外そうとして縄を解こうとするのだが、案外と縄目がきつい。全体が繋がっているので、結び目を緩めようとする作業に対し、結ばれた柵が一体となって抵抗を示す。甘かった結び目も互いに引っ張り合って解きにくい。また雨風に当ってゆるくもなくなるのである。
 絹莢の実のわずかな残りを採り、縄をはずし竹を全部抜き、伸びた茎や葉の固まりを始末をしているうちに、一時間はかかってしまった。
 災害以降よく使われる「絆」や「つながり」という言葉、東京大学とプロジェクトを進めている希望学の「弱い結びつき(weak tie)」の考えは、強い結束とか深い契りではなく、簡単には解けず、壊れかけても補強すれば長持ちするようなネットワークを意味している。これらは社会的な関係であり、人間どうしの活動を通して互いに感じるより方法はない訳だ。しかし偶然に、畑仕事をしているうちに、この結びつきの原理を具体的な物として理解する助けを見つけたような気がした。

(2012.6.23 記)