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イッセイエッセイ

708号 英語で話すヒント(小松達也著 岩波新書 2012年)

2012年04月18日(水)

(1章)通訳と英語学習
 通訳技術を英語学習へ応用する考えについては、欧州の通訳専門家は批判的であるが、著者はそう考えない。
 以下著者の方法――    
 逐語訳(初心者にこの傾向つよい)ではなく、自分の言葉で、が通訳の要諦/英語で考えて話すということが言われるが、日本語で考えて英語で話すのが自然である/言語間の表現の違いに気づき意識することが、むしろ学習効果を高める/
(2章)まず聞き取る
<単語を認識する>
 単語を聞きわけるコツ―①英語はストレス(強勢)でリズムがとられる言語/単語の90%は最初のシラブルにストレスがある。ストレスに注意するとそれが単語のはじまりと分る/②ポーズが意味の切れ目(当り前?)/③単語の最初の子音に注意/一語一語にこだわりすぎない―「全ての単語を聞きとろうとする」というのが、第2言語での聞き取りにおける最大の問題点/聞き取れない単語があったからといって、がっかりすることなく、前後関係から何を云わんとしているか類推するという態度が大事/‘Use your imagination’/
<パーシングとプロポジション>
 わかる単語をもとに文章の構造を知る(parsing パーシング)。そこに文法が役立つ/大体はSVO、SVC/who + do + what + where or when/
(3章)意味の理解
<幹と枝葉をわける>
 wordよりもセンスをとらえる/パラグラフ(センテンスの次の単位)の区切りは20~40秒であり、パラグラフ単位で要点を伝えるのが同時通訳/1つのパラグラフではmain ideaが中心となって話しが展開、そしてパラフレーズ(別の言葉で言い換え)、裏づける具体例(supporting details)がパラグラフの構成となる/幹と枝葉を仕分けして聞く癖―集中とリラックス、聞き取りが楽になる/メイン・アイディアはマスター・センテンス(master sentence)の形で示され、確率80%でパラグラフの冒頭に来る(米国では速読法に使われている)/
<論理の流れをつかむ>
 introduction→body(statement 1~2)→conclusion/話には論理があり、論理には型がある、予測(anticipation)が役に立つ
<イメージ化する visualization>
 シチュエーション・モデル、言葉にあるヒント(+)一般常識/
(4章)英語で話す
<外国語の話者として>
 ネイティブ・スピーカーの口頭会話の特色は、以下のとおり。
 ①文章構造が書き言葉に比べてずっと簡単
 ②ボキャブラリーは具体的な語よりもbe, have, get, take, thing, place, good, badのような用途の広い一般的なものが多い
 ③接続詞をあまり使わない並列的な構文が多く、従属節を使うことは少ない。接続詞は使ってもand, but, so, when, if, because のような簡単なものが多い
 ④意味を伝えるのに、ポーズやリズム、イントネーションといった音声的要素を多用する
 ⑤情報の密度が比較的低い
 ⑥相づちのような相互反応的な表現が多い
 ⑦yes, of course, sure, I seeなどといった合意を表す表現が多く、話題が頻繁に変わる
 ⑧未完のセンテンスが多い。

 日本人にとって①、③、④は参考にすべし/⑦、⑧は見習わない方がよい、特に⑧はさける/②のボキャブラリーについては、易しい単語を使うことが日本人には意外と難しい。むしろレベルの高い単語を使った方が表現しやすい。ボキャブラリーの充実が第二言語の話者にとって非常に大切なゆえんである。
<情報を伝える英語>
 話し言葉の世界には「会話型」と「情報伝達型」が存在する/いわゆるおしゃべりは前者、国際会議の通訳対象は後者/情報伝達型においてのネイティブとの差は、意識的・知的要素が強くて差は大きくはない/したがって「ゆっくり話そう」/
<英語らしいセンテンスを作る>
 日本語のSOV型から英語のSVO型への意識的な「練習の繰り返し」の努力、それによる「自動化」automatization(リハーサル)/適切な文法をまず選ぶ/修飾句の位置について「左方分枝」(日本語)と右方分枝(英語)/なお動詞が最後にくる悩みあり/
(7章)英語で話す
<ボキャブラリーを増やすには>
 使える語彙が肝心、「発表語彙」は「理解語彙」の約半分に過ぎない/2つのアプローチ「意図的な学習」と「付随的な学習」、3000語までは前者に必要/多読に加え、気になる用例へのattentionとrehearsal/さらにreading for pleasure/
 文法とcollocation(単語相互の「慣用的」結びつき)例gave a speech, have a discussion/heavy rain, strong wind/リーディングは重要かつ手軽な有効学習策である/
<発音について>
 英語の発音は、日本語話者にとって大きな問題ではない(?!)/lとrもほとんど障害にならない。母音・子音の細かい発音ではなくリズム(イントネーション)を身につけることが大事(日本語からくるマイナス「転移」に注意。転移は母国語がじゃますること。)/文章全体のリズムに気を配って、loud and clear できるだけ大きな声で(loud)、はっきり(clear)話すこと/「母音化」(vowelization)をさける―子音で終わるべきところに母音をつけてしまわない/動機と継続/文学と英語学習は無縁ではない/

(5章<誤解なくつたえるには>、6章<日本語でこう言いたい時>、の2章は個別的テーマを扱っており省略した。)

(2012.4.8記)

  これまで音声英語教育の関係者が主張していることと共通点多い。しかし特に重要なことは、同時通訳者としてみずからの経験と確信に基づいた主張であるので、単なる表面的な提言ではないということである。教育関係者の一読が必要である。
 なお、本書においても未解決の問題点と愚考するものについて2点――    
 すべての単語を聞きとれない状況の心理的割り切りについて、どの程度で妥協すべきなのか。つまり日本語でも、騒音とか注意が欠けた条件下で聞きとれないこともあるが、頓着しないこととの違いである。
 次に、たとえば30秒間なり1分間なり、ともかく連続して話しを続け、会話のやりとりを中断しない技術は(相手の話しがわかることは前提に)、どう身につけたらよいのか。このマニュアルを発明できないか。

(2012.4.12記)