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イッセイエッセイ

699号 シャル・ウィ・ダンス

2012年04月02日(月)

 明治の文明開化からこの方、わが日本はあらゆる西欧の制度、習慣、文物を意識してとり入れてきた。鹿鳴館時代と呼ばれた頃さえあった。そして戦後は米国に過度に傾き、アメリカ式のものをほとんど無規定にうけ入れた。
 しかしながらその中で、日本に定着することがなかった風俗は、男女同志がダンスをすることではないかと思う。
 先日のBSプレミアムに「マイ・フェア・レディ」が放映され、初めて全編を通しで観た。ヘップバーンが場末の花売娘から社交界の淑女に変身できたのは、博士の語学指導によるロンドンの下町言葉の矯正もさることながら、映画の筋書きでは、某国の皇太子とダンスを踊ることができたことが決定的であった。毎晩のように放映しているゴシップ的なハリウッド・ドラマにおいても、若い男女がダンスをしたり、パーティを開く場面がともかく多い。有名な西部劇「真昼の決闘」にだって、フォークダンス風ではあるが、ダンスをする場面がある。
 シャル・ウィ・ダンス―姿勢を正し、優雅に男女がともに手をとって身体運動を行う習慣は、日本の学校や社会の場では見ることが少なく、訓練もなされてこなかった。
 中国を旅行して早朝に公園を散歩をしてみるとわかる。朝飯前から熟年の何組もの男女がアウトドアのダンスをしている風景がそこにある。これは日本人にはやや違和感があるかもしれないが、それにしても中国では、日本とはちがい集団のあるいは男女のダンスの習慣は根づいているらしいのである。
 シャル・ウィ・ダンス―ここでステップの跳びすぎになる議論かもしれないが、諸国間のダンスの普及程度と、晩婚化の問題とに有益な相関関係が果たしてあるやなしや、いちど研究をしてみるのも面白いであろう。
 今年度から柔道・剣道その他の武道が、中学1・2年の体育の時間に正式にとり入れられる。子供の頃から武道の精神にふれることや、怪我をしないように注意して身を守る習慣を身につけることは、極めて大事なことだが、舞踊や演劇といった子供が自分のよいところを外に向けて表現する訓練は、もっと学校で行ってよいと思われるのだが。 

(2012.3.24記)