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イッセイエッセイ

680号 日曜の新聞を読んで(古事記、日本中世史、都市と地方)

2012年02月24日(金)

 どの新聞も日曜日の紙面は、比較的に一般の記事が少なく、むしろ文化や読書、生活に役立つ情報などが多く載っている。
 たとえば今日(2012.1.22)の読売新聞をみると、まず26面に「週刊 KODOMO新聞」というのがある。その頁では「入門!*古事記」というのが目に入る。竹田(つね)(やす)(慶応大講師1975生まれ)という先生に対して子供記者(といっても高1、高2の記者と専門の記者がいっしょ)がインタビューした記事である。ことしは古事記編さん1,300年という解説もついている。
 その中から以下のQ&A。
 (問)古事記を研究していて面白いと感じることは何ですか。
 (答)「ストーリーが緻密(ちみつ)で読み物として楽しめ、ダジャレも多い。漫画本を読むような面白さがあります。古くさい(むずか)しいと思いがちですが、現代語訳なら難しくない。読むときの最大のコツは名前を忘れること。神様がたくさん出てきますが、ほとんど二度と登場しません。」
 (問)「古事記」から学んでほしいことは何ですか。
 (答)「自然観、死生観、歴史観という日本的な価値観が分かります。『いただきます』、『おかげさま』という感覚や、仕事を生きがいと思う価値観は日本人特有のものです。民族の行動は民族の価値観を見ればわかりますが、今の日本人には歴史観がありません・・・」
 この竹田先生は、日本の伝統文化やあり方を学ぶ研究会を自分で作り、「古事記の現代語訳を全国のホテルに無料配布することも始めました」と言っている。
 ここに述べている古事記の読み方のコツと語っているところは、教育上の大事なアドバイスだと思われる。またホテルに本を配る話は、全く別の余談となるが、福井のブランド資料をまず県内のホテルや旅館に配るのがよいというヒントになる。
 この同じ頁に「ジュニア記者募集」という案内欄がある。記者の応募資格は一時間半以内で東京本社に通える人になっている。つまり東京、茨城、埼玉、千葉、神奈川の在住ということであり、子供たちの対象が大都市型になっている。ラジオ放送を聞いていても、子供の応募や作品のことになると、ほとんど関東の人たちに限定されている実際も、この種のメディアの都市中心と共通したところがある。
 次に20面と21面には、小・中学生と高校生部門の写真大賞やエッセー大賞の作品が発表されている。入賞した児童生徒の地域名を見ると、全国の中で27の都道府県に限られ片よりがある。残念だが福井はその中に入っておらず、紙面からだけのことだが、われわれは外に向いていない情況であることを感じる。この新聞をあまりとっていないかもしれないが、応募くらいはできると思うのであるが。
 そんな気分の中で、読書欄「本 よみうり堂」(12面)に目を移す。ここは書評欄であるから、種類としてはあらゆる部門の刊行物がとりあげられている。書評の斜め読みだから、解説の理解は頭の中でぼんやりしているが、スピード情報としては一応頭に入る。「日本近世の歴史Ⅰ 天下人の時代」(古川弘文館)の書評あり。筆者が藤井(じょう)()という京都大大学院教授であり、「福井県生まれ」と紹介されていたので、自然と目に入る。
 この本は、江戸時代の政治史、近世の政治史の専門的理解が、高校の教科書レベルにとどまり、きわめて遅れているという問題意識のもとに、日本近世を豪毅な筆致で論じた本のようだ(杉山正明評)。
 読書欄の最初の11面には斎藤孝教授(明大)が担当する「本のソムリエ」というのがある。「江戸時代を知りたい」という女性への答えが書かれている。「江戸時代館」(小学館)、「江戸語の辞典」前田勇編(講談社学術文庫品切れ)、「江戸職人図聚」三谷一馬(中公文庫)、「大江戸事情」石川英輔(講談社文庫)、そのほか式亭三馬、十返舎一九の草紙をふくめて解説している。これを見ると「橘曙覧(たちばなのあけみ)全歌集」(岩波文庫、品切れ)は『たのしみは(はた)おりたてて新しきころもを()ひて()が着する時』など江戸の庶民のささやかな楽しみが歌にされていて心がやわらぎます」と書いてくれている。質問は江戸時代の庶民の生活がわかる本ということなのだが、「江戸しぐさ」(越川禮子)、「江戸へようこそ」(杉浦日向子)が紹介されていることからもわかるように、とりあげている著書は、大体に江戸(いま東京)についての本である。しかし唯一、江戸時代の「地方」のことがわかるものとしてこの曙覧歌集がのっていたので、多少気分がやすまる日曜の午前である。 

(2012.1.22記)