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イッセイエッセイ

647号 秋の花と鳥と虫

2011年10月15日(土)

 今朝の雀たちは群れをなして動いている。わずかしかまだ散っていない金木犀の小木の繁みに入り込み、すばやく動き回り、そのたびに黄金の花を散らしている。しばらくすると一羽、二羽とそこから飛び出してきて、隣の紅葉の樹に移るのだ。数羽だけかと思っていると、次々と出てくる。あっという間に十羽近く、金木犀のこんもりした枝の中から出てきた。雀たちは静かにしている時間もしばらくはあるが、鳴きはじめるや騒しくなり、高い声や低い声をまじえてにぎやかである。
 ともかく今朝はすばらしい快晴だ。早朝から九時過ぎまで、花火の音が時おり聞こえてくる。近くの小学校で行事があるのだろう。風はほとんどないので、紫の萩に大きなうねりはなく、白い花のまだ残るサルスベリの梢がやや揺れる程度である。
 そのうちに雀はまた金木犀の繁みの方に戻り、せわしく中で動き回っている。よく見ると単に集まっているだけでなく、花びらをついばんでいるようだ。木犀の花が雀のエサになるのかはしらない。しかしあれだけ香りの濃厚な花の近くにいると、雀の小さい体はくらくらして麻酔的な影響力を受けそうな気もする。雀はわれわれ人間の嗅覚と違っているのか香りを解さない態度で、チョンチョン、グチュグチュと勝手に声をあげ、仕事をしているというより楽しんでいる風である。
 雀の声を聞いているうちに、やや異なった連続したチリチリチッチッチッという強い声がしてきた。はてはと思って木々が集まっている垣根の向こうに目をやると、最も高いサルスベリの細い一本の先に、モズがやって来ている。十時ごろの朝の太陽に向い、長く細い尾をしきりに上下して周囲を見回す。さらに上下しながら癇強くその尾をしばらく斜めにひねり回し、もとの上下動に戻る。
 騒いでいた雀たちはモズの出現のせいかはわからぬが、静かになる。金木犀の中から二羽出てきて、夏椿の枯れた先に止まって、モズのような姿のままじっと動かないでいる。何のまねかまた目的なのかはしらない。
 モズをそのまま見ていると、背景の青空の先に大きく動くものが現れた。楔型になって群れて飛ぶ七、八羽の雁である。北方から飛来してきたのか、はじめは全体が大きな鳥のように見えて驚いた。しかし自分とはちがい鳥のモズはまったくそのままの姿勢である。群れは西の方に去って行き、どんどん小さくなり最後は一本の列のように見えて消えた。
 モズは3分ほど鳴いていなくなった。しばらく静かであったが、今度は人間が登場する。突然大きな音がした。近所で干した布団を叩く音である。モズの声には動かなかった雀だが、今度はいっせいに金木犀から全部が飛び立っていった。
 しばらくは車の音、リーンとのばす虫の声。また10分ほどすると今度はさらに強く異なったモズの声が聞こえてきた。より近くの鳴き声なのだがどこに止まっているかわからなかった。また10分ほどすると今度はサルスベリのすぐ隣の松の先に来て、鳴かずに十秒ほどで飛び去った。さらに同じような間隔で姿は見えないが2回ほど鳴いた。最初からみて三、四十分後もう一度サルスベリに止まった。これも十秒ほどいるだけで黙って斜め下に落ちるように消えた。
 昼になると鳥の姿もなく、今度は赤トンボの群れが、10匹ほど現れ互いにやや遠い間隔で敏捷に飛び回り、しばらくするといなくなった。

(2011.10.9記)

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 今日もよい天気だ。しかも風がなく暖かい。モズがまたサルスベリのてっぺんに止っている。バードウォッチングの双眼鏡の円の中のモズは、意外と太っており遠目のように細く痩せてはいない。胸の羽毛のところがベージュ色の斑点のまだらになっていて美しいつやである。
 天気がよく麗らかなために、小さい羽虫のブラウン運動が起っており、モズの止っている高さ近くまで集団をはぐれた虫が昇ってくる。鵙はこの虫をすばやく枝を離れて食い、あっという間の羽ばたきで元の位置にもどる。そうした後に隣のサルスベリのやや低い枝の途中に傾いた姿勢で止まり、白い花をついばんでいる。
 日向ぼっこをかねて庭に出ると、赤トンボが何匹か今日も飛び、番いのトンボも一組やや重たそうに通りすぎる。地上からすこし伸びた小枝の先に何度も止まったり飛んだりしている一匹は、胴体が特に真赤である。しかも四枚の透明な羽根の先が戦闘機のような赤茶の丸い紋が入り、珍しい赤トンボの種類である。垣根のきわには芙蓉が全体をふんわりさせて、白と薄紅のみごとな花をつけている。その横には赤い実がたくさん連なったピラカンサの木が目をひく。 

(2011.10.10記)