西川一誠後援会サイト

イッセイエッセイ詳細

イッセイエッセイ

620号 地図の作り方、使い方

2011年07月09日(土)

 私の好きなもの三つと言われれば、①地図帳、②車窓風景、③高所、を挙げることができるだろう。いずれもパノラマ的で、憧れとか、気持ちよさとか、見晴しとかに関係する。もちろん他の分野での好きなもの三つもないわけではない。
 新聞やTVを見て、また本などを読んでいると、色々な場所の名前が出てくる。最近は外国の地名を多く目にするが、できるだけ地図を開いて確かめることにしている。そして地図は高校生用の地図が一番使いやすい。地図上にさがしている名前があると嬉しいが、地名が見つからないことも頗る多い。
    校長先生の集まりの場で、以前に地図について話しをしたことがある。今日の2万50
   00万分の
1の地図ができたのは並大抵のことではなく、明治以降、多くの技術者が命
   をかけて踏査して正
確比類のない日本地図ができ上がった。寺田寅彦が随筆のどこか
   で、先人の苦労話を子供たち
にぜひ教えこむべきと、強く求めているのを読んで印象を
   受けた。

 教科書用の高校地図については、自分の息子や娘の使った出版年がそれぞれちがう地図を便宜使っているのだが、地図の表記方法や使い勝手には多少の差がある。
 今の高校用地図帳で一番気に入らないのは、日本各地の地図が、なぜか地図帳の前半部ではなくて後半部にあることである。身近な事柄は、しばしば調べる機会も多いわけだから、日本の国内の地名や場所を当ろうとすると、地図帳の後半部を捜さなければならない。頁をあれこれめくりながら、例えば目あての東北地方の地図に到着する。
 こうした地図帳の編集の仕方は、学校の地理教育の基本にもかかわるところがある。
 小・中学校の社会科の学習は、教科書をみてもわかるが身の回りの郷土・ふるさとから始まる。しかし高校生になると突然に世界から始まるというのは、はたして学習上意味あるものなのだろうか。
    まずランベルト正積方位図法のユーラシア、北極、オセアニアがあって、次に中国を中
   心におい
て、東アジア、中国東部、朝鮮半島、東南アジア、西太平洋、南・西アジア、ア
   フリカそしてヨーロ
ッパ、ユーラシア北部、北米、南米、オーストラリアを経て、世界地理
   の資料が20頁ほどあり、そ
の後に日本の地図が多円錐図法により九州からはじまり北
   海道で終る。(帝国書院 平成六年
新詳高等地図)
 今日は中日本高速道路(株)の新旧の名古屋支社長が来訪された。その時に管内の高速道路の地図を見ながら雑談を交わした。その地図はたてよこ60cm程の大きさのものであった。日本列島の中央部を区切って地図にしたものである。中程度の縮尺による、ふつうの地図帳などでは見かけないエリア区分の地図であり、よくあるように北陸各県の部分が境目として切り分けられていない。そのため福井県と各地の遠近、長短、大小、方角などについて新しい見方とイメージを持つことができる。
 今回の原子力発電所の事故によって、直線距離とか同心円などといった没風景的なこれまでにない地図上の観念が、人々の頭の中にとり込まれることになった。
 世を震撼させた出来事は過去に何度もあるが、なんとかして今回の問題を克服して、地図を楽しく使えるようにしなくてはならない。

(’11.6月末)