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イッセイエッセイ

608号 七つの子

2011年06月08日(水)

 どうも庭の木立にカラスの巣ができて、幼鳥が巣立ちはじめたらしい。昨日、今日と土日のせいか、よく声が聴こえ姿も目にとまる。
 ふつうの声よりは低くて、胴間声でグアグアと集まって騒ぐ。また何匹か一緒に庭や垣根を跳びはねたりする。
 体はじゅうぶん大きいので親か子どもか区別がつきにくい。二、三羽が口をたえず大きく開けており、赤い腔中がみえる。おそらくその数羽が幼鳥のカラスと思われる。やや小さいカラスがやって来たが、それは小さくとも母親のカラスらしく、そこへ大きい体の幼鳥のカラスが寄って口を近づけたり、羽根を低くして半開きにする。何にでも関心を向けて、木の枝元を啄ばんだり、葉をくわえたりする。
 一週間ほど前にテレビのドキュメンタリーでアメリカのカラスの生態を発信機をつけて観察する番組があった。交通事故で死んだ一匹のカラスに対し、沢山のカラスが高見に止って、ヒッチコックの映画めいた行動をする。その種類のカラスは寿命が20年近くもあるそうで、夫婦は一生変わらない。カラスは人間より成長が速いのは確かだから、そんなに長く生きるとなると、カラスの知恵もみがきがかかるだろう。
 こう書きながら庭を見ると、カラスの群は立ち去って、丁度セキレイらしい白黒の一羽が首をふりながら歩いて、ときどき芝生の中の小虫をみつけて食べている。ぐるっと長円形に庭を一廻りして金木犀の影の向うに消えた。
 改めてカラスの巣の在り所を見るのだが、どこにあるのか見当がつかない。巣はないのかもしれない。また庭をみるとカラスが一羽だけ置いてきぼりにされて、塀垣の上に止っている。遠くの声をたよりに首をかしげるが、追ってゆくほどの元気はなく、やがて瓦の上にうずくまってしまう。眼を白黒というか、灰と黒にまばたきして、時々腔を大きくあけるが声はださない。喙の先は黒くなくやや白味を帯び、羽根も深黒ならぬ黒褐色である。
 午後になると、カラスの姿も声も全くなくなった。

 

(’11.6.4(土)くもり)