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イッセイエッセイ

593号 早春の風景(福井の環境について)

2011年02月28日(月)

 雪どけの風景ほど、人の心に強く感じてくる喜びとなにかこれからのことへの期待感をもたらしてくれるものはない。
 大雪のときに積み上げられたり切り取られたごつごつした雪の表面も、暖かさが加わってだんだん丸みを帯びて融けてゆき、陽にあたってまぶしく照り返す様子は、自然が明るくなって伸び伸びした気持にさせてくれる。
 人の手の及ばない広い田圃に積っていた雪も、自然と嵩さが低くなり、表面に波紋のような穏やかなでこぼこが現われはじめ、土手のあたりは雪間も顔を見せる。いかにも冬から次の風景に静かに席をゆずってゆく風情を示し、われわれを愉快にする。
 山際の雑木林の斜面や杉林は、木立ち一本ずつが雪の白さを背景にまっすぐに浮き出て、根元には雪のへこみや土の黒さが感じられる。そしてどの季節に比べてよりも、里山としての親しみを吾々に与えてくれる。
 町からすこし郊外に車を走らせると、大きな橋を過ぎたり、農道の小橋を渡ることがある。そういう所はたいてい他の場所よりも高い位置に在って見通しがいい。白山の白い連なりが東の方に真横から美しく望まれることが多い。福井の平野は近くの山並と遠くの峰々が連続して重なることはない。だから平野や谷を挟んでほどよい距離に外山と深山が重なって見ることができ、平坦地から見る晩冬から早春にかけての山の風景は実にコントラストが明瞭ですぐれている。

(’11.2月中旬記)