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585号 F・ベイコンと「イングランド社会史」

2010年10月20日(水)

  フランシス・ベイコンの生涯は、16世紀後半から17世紀初期にかけてであり、エリザベス一世とジェイムズ一世の治政下、そしてシェークスピアの活躍したルネサンス時代とほぼ重なる。
  現代のわれわれが普通に知っている随筆や随想の中で、このベイコンのものは最も観察が鋭く、かつ助言として有益なものを与えてくれる(502号参照 2010年1月)。 
  ブリッグズ(Asa Briggs)の「イングランド社会史」には、ベイコンからの引用が何箇所かある。いずれもベイコンの主張するところの成熟した物の見方、的確性を参考にしての引用であろう。 
  クロムウェルのピューリタン革命(1649年)に先立つジェイムズ一世、チャールズ一世時代の「宮廷コート」は国内でも海外でもしばしば放漫な支出をおこなっていた。そしてブリッグズは、宮廷の官職にありつく方法について、次のように引用している。
  「自分の経験を土台にしたフランシス・ベイコンの説得力ある言葉を借りれば、『らせん階段』をのぼることによって手に入れられるものであった」(第6章 革命の17世紀 220頁)。 
  この部分は、渡辺義雄訳(岩波文庫 1983年)の「ベーコン随想集」(1597―1625年)の第11篇「高い地位について」のところにある。その冒頭で、 
  「高い地位にある人々は三重に召使である。君主または国家の召使、名声の召使、仕事の召使である。(中略)他の人々を支配する権力を求めて自分自身を支配する権力を失うとは、奇妙な欲望である。昇進することは骨が折れる。人々は苦痛を忍んでもっと大きな苦痛に到達するのである」 
  そして、 
  「自然においては諸物が自分の場所を目ざして激しく動き、自分の場所では静止するように、徳性も猟官中は激しく動き、権力を得れば落ち着いて静かになる。高位へ登ることはすべてによる」(傍点小生) 
  そのほかブリッグズの「社会史」におけるベイコンからのいくつかの引用、 
  「フランシス・ベイコン(1561―1626)は火薬と印刷を自分の時代の三大発明の二つにあげている。三番目のものは船員の使う羅針盤である」(第5章 16世紀のイングランド 201頁) 
  「それまでのスコラ学の伝統を破ってという概念をもちこんだのは、『ニュー・アトランティス』の予言者フランシス・ベイコンであった」(第7章 18世紀のイングランド 250頁 傍点小生)
  「古代の遺物とは破壊された歴史であり、偶然に時の暴力から免れた歴史の断片である。
「フランシス・ベイコン『知の革新』(1605)」(第1章 先史時代 冒頭のエピグラフから)

(2010.10.11記)