西川一誠後援会サイト

イッセイエッセイ詳細

イッセイエッセイ

1318号 未来志向

2018年06月13日(水)

 人間はもともと未来志向の性質をもっている。一般的に過去の方向には関心をもたない。その証拠に、人は義務的に日記をつけることがあるが絶えず億劫を感じる。子供が夏休みの日記を嫌うのはごく当然のことである。要するに人間はこれから起るかもしれないことに対し、それが成就しそうな良いことであれあるいは、耐ねばならない苦しいことであれ、ともかく先のことに強い関心をいだきつづけるのである。
 では一方で、なぜ人間は過ぎたことや取り返しのつかないことに対し、くよくよと後悔したりこだわったりするのであろうか。これは未来において解決することが凡そ不可能な事柄であるからこそ、未来に向いながら過去のことを反省するためであろう。もし未来において回復可能な問題であったなら、後悔などはせず挑戦し直すであろう。
 とくに今世紀に入ってからの現象かと思うが、過去の総括や清算をせよ、未来志向の行動をとれ、などといった言説が目立つ。しかしこのどちらも無用のことであって、人間にとって前者は本当には実行しにくい性格のものであり後者は無意識にいつも実行していることにすぎない。

(2018.5.9 記)