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イッセイエッセイ

1292号 目的と道具

2018年03月13日(火)

 机上に万年筆が見当たらなくなり原稿に手がつかない小説家であるとか、辞書にアンダーラインを引くための色鉛筆を見失ってぐずぐずしている翻訳家といった人を想像するならば、これは目的と道具の関係が逆転していると笑われるかもしれない。しかし本末転倒な姿なのだが、意外とこうした道具主義が日常生活では我を通すことになる。しかも単なる個人の性癖とばかりは言えないのである。
 目的つまり内容の方は漠として感覚的に把みようがないのだが、手段にいついては判然りいつも具体的に馴じんでいるので、我々にとっては親近感と安心感がありぴったりくる。手段を手に入れれば落ち着きやすく着手できて仕事が捗るということになる。
 道具主義もいま手にしている道具に対するものならそれで良いのだが、全く新しい道具を揃えてくれないと仕事が果たせないというような要求となるなら別の問題が起こってくる。

(2018.2.15 記)