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イッセイエッセイ

1290号 ダイノ争論(3)―発掘、骨格、復元などの研究のこれから

2018年03月13日(火)

○「徹底図解 恐竜の世界」金子隆一・監修(2010年 新星出版社)
 日本では恐竜についての多くの著書が出版され、毎年のように大恐竜展が開かれ、恐竜を学びたい初心者にとっては天国のような世界である。そして一通りの基本知識を身につけた恐竜人口の比率はダントツかもしれない。このように民間の研究者でジャーナリストである著者は「はじめに」のところで述べる。
 しかし、「初学の段階を過ぎ、もう少し踏み込んだ科学としての恐竜学の世界を覗き込もうとする、ここからは急に道は狭く、険しくなってくる。」として、一次情報を得るのは語学の壁と専門用語の壁が立ちはだかると述べる。
 この本は、さらに「ちょっと上」を目指す本としており、骨格のままの姿ではなくてほとんどが復元生体像で図解され、恐竜のたいていの問題が説明されている。しかし、紙面の関係か分類や用語が十分には解説されていないところがある。著者は福井県立恐竜博物館を公平な観点から評価、指導をされたと聞く。

○「恐竜の骨を読む」犬塚則久(東大・古脊椎動物研究所代表)「NHKブックス「恐竜ホネホネ学」(2006年)」を改筆したもの(講談社学術文庫2014年)
 恐竜の骨学、筋学、歯学そして比較解剖学、機能形態学、生体力学を一般向けに解説した本である(国立博物館の資料を使っている)。恐竜博物館で骨格を眺めるときに、漫然と恐竜の骨の姿を眺める。路傍の植物を雑草としてとらえるようなレベルの見方を少しでも改善するのに役立つ本なのであろう。しかし内容は易しくはないので一読だけでは無理である。また具体の恐竜の類種ごとに骨格を目の前にして勉強すると理解が深くなるであろうと思える。つまり分かりにくい専門化した本である。
 巻末には登場する恐竜について、その属名、目、亜目、科、地質年代、産地、大きさ、特徴をまとめた小事典が付いていて便利である。
 また、次のような古典的名作が欧米の古脊椎動物学の教科書の定番として発刊されていると紹介している。
 Romer(1966年)Vertebrate Paleontology(脊椎動物古生物学)
 Colbert(1980年)Evolution of the vertebrates(脊椎動物の進化、第五版)

○「カラー版 恐竜たちの地球」冨田幸光(岩波新書1999年)
 学界で有効と認められている恐竜はおよそ300属ほどあって、骨格が比較的よく分かっている各分類群の代表的な約100属を選んで、系統的(分岐分類法)に骨格を基に解説している。各博物館の写真は明瞭でわかりやすい。
 この本の中には、ニッポノサウルス(旧樺太竜)以外は日本の恐竜が全く登場しない。その理由を「あとがき」に次のように述べる。
 「この十年くらいの間、日本各地から恐竜化石発見の報道が相次いでいる。しかし日本の恐竜化石はそのほとんどが断片的で、本書で扱うような骨格のかなりの部分が見つかっているものとは、質的に同じに扱えないのである。なかには、質の高いものも二、三種発見されていることは事実だが、それらはまだ本格的な論文の形で出版されていないのである。幸い、それらの論文は現在進行中である。本書では割愛させていただいたが、近い将来に期待している。」
 これは出版時が90年代後半であった頃の発言であるから、現在では福井産の恐竜のいくつかの論文記載が既に出ているので、おそらく筆者の期待に応えたことになるのかもしれない。

○「恐竜の復元」真鍋真・総監修
 恐竜の骨格を中心とした研究と、最前線のイラスト・造形の復元作家との共同による、グラフィックを主眼にした図解本である。この本から受ける印象は、恐竜学は学問であると同時に一つの産業でもあり、これからますます最終的に復元の姿を作り出す芸術家たちが発言力を利かせる世界になるのではないかと思える。日本人の作家としては小田隆(イラスト)、田渕良二(木彫)、徳川広和(石粉粘土の造形)という人たちが登場している。

(2018.1.16 記)