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イッセイエッセイ

1177号 英語のクラウド学習法

2016年08月17日(水)

 「着る」ことは英語で「wear」であるとして、1対1の対応だけで単語を憶えただけでは問題が生じる。その単語の使い方が広い範囲の言語(この場合、英語)の方からは、眼鏡をかける、帽子をかぶる、指輪をはめる…もすべてwearであるので、例えば日本語で話すとき靴を着る、眼鏡を着るといった言い間違いが生まれる。狭い使い方をしている言語の方からは、wearを英語の汎用性の高い動詞として使える領域をわきまえておくと労力が省けて、使い勝手のよい便利な動詞になるのである。
 これは逆に日本語の方からもよく似た問題が生じるのであって、広い使い方の可能な「みる(見る)」を英語の「see」とだけ憶えると、see TVとかsee
the blackboardといった間違った使い方が起ってしまう。
 相違っていても話し切ってしまう度胸が出来ていればまだしもだが、そうする以前に単語の使い方に不安をもってしまって躊躇すればもう話せなくなる(これは日常的に実感するところ)。
 とくに動詞は、名詞などに比べて言葉の使い方の機能が広汎であるから、その動詞の使用範囲や類似の動詞との相互関係などを一緒にまとめて学習し訓練しなければ、その単語の使い方をマスターしたことにはならないし、そのように学習することそのものが英語教育のポイントとなるのである。
 これをさらに個々の単語から離れて一つの文章レベルになった場合、単語の配列に関する正しい文法的な構成が自然とできる習慣化が必要となってくる。
 例えば、外国人向けの初歩的な日本語検定試験にこんなのがある。単語の並び換えの問題である。
(例1)
 たのんだ                   言いました。
 ①なかったので ②なかなか ③料理りょうりが ④店員てんいん
(例2)
 「ぼうし、どこで、なくしたんですか。」
 「先週の旅行で                   きたみたいなんです。」
 ①かえりの ②わすれて ③なかに ④電車の
                                   (The Japan Timesより)
 これを日本人が解く場合はやってみてわかることだが、あれこれ口のなかで言いまわしをして、意味が通るようにすれば、各問数秒で答えが作れる。特別文法を使うわけではなく、日本語として語順に慣れているのでまた日常的にそのように使っているから、正答は当り前なのである。
 では次に英語の方である。今年のセンター入試試験から採ってある。問答式であり文章も長いし、単語数も多いので、今の日本語の問題よりは難しく外国人が解いてもかなり難しいと想像できる(外国人の話しではフォーマルな口語文として自然な文章だということだ)。
(例1)
 Hotel clerk: Good evening, Mr. and Mrs.
Gomez. How can I help you?
 Mrs. Gomez: Well,          
                    us how to get
to the theater.
 ①could ②if ③tell ④we’re ⑤wondering
⑥you
(例2)
 Student: Excuse me. I’d like to know
what we will be discussing in next week’s seminar.
 Professor: I haven’t decide yet, so     
                         email.
 ①by ②let ③me ④send ⑤the
details ⑥you
(例3)
 Interviewer: How did you change after becoming
the head of such a larg company?
 President: I          
                    my time more
effectively.
 ①came to ②manage
③need ④realize ⑤the ⑥to

 実際の試験問題は、文章も選択語句も二行になっていて、眼が一層あっちこち行き戻りさせるようになっている(意識してそうしたのではないと思うが、紙面の関係か)。実際の解答は指定した順番の語を二つだけ答えるようになっている。
 こうした「語順の並び換え」問題がセンター入試などに出ているのだが、これはいずれも日本語構文からみて距離感のある英語構文を再構成させており(いわゆる引っかかる部分が入っている)、受験者を悩ませる問題でありそれを狙っている。
 これを英語のネイティブであるALTの先生に回答してもらったところ、三問の所要時間は1分15秒、つまり1問に25秒程度かかったことになる。もちろん答えがわからないなんてことは日本語の場合と同じく起らない。彼らが頭の中で又口腔の中で、日本人と同じようにやりながら答えを出したのだと思われる。英文法のことを念頭においてはいないだろう。
 ちなみにセンター入試での受験生の正答率は問1が約8割、問2が約6割、問3が6割強であったようだ。(Z会調べ)
 予想される解答の手法は英語の上達度に応じた形で、文法を使いながら、あれこれ単語のつながりや言い回しをしながら、ほとんど直観に近いところで、といった方法で行われることになる。これらのいずれかによるにしても、より自然に近い方法で解答できなければ、この口語英語も瞬間的に話せないことを意味する。
 入試の文章が日常英語にどれだけ近いのかはあるにしても、ラジオ番組などを聞いている限り、この程度の言い回しは自然のスピードで展開しているように思う。ある程度の速さで文が口をついて出せなければ、英語は話せないままとなるはずだ。さらに言えば、この種の文構造を研究して、良い教材を網羅して、口に出して繰り返し話す訓練をさせ、自然と口をついて出るようにすれば、マスターできることになる。つまり話す英語の学習目標がここに設定できたことになる。
 再度くり返すことになるが、対策法は、一般に実行されているような文法知識を動員してあれこれ並び換えたりする訓練(練習)であってはならないのである。
 日本人からみて複雑ではあっても、英語として正しい語順の文章として自然に口に出させて暗唱できるようにすること、つまり違和感のない馴れを作り上げることができれば、この文例を聞いたり話したりできる完成した姿となる。一番直截なマスター法は、センター入試の語順整序の過去問について、すべてを暗唱し、語順の行き戻りを最早すこしも感じないようになることなのである。
 さて元にもどって、単語(とくに動詞)の問題についても、see,look,watchの「見る」違いを概念的につかむよりも、口に出してどのように使っているかに馴れて初めて、言葉の互いの違いが身に付いたことになる。

(2016.7.31 記)