西川一誠後援会サイト

イッセイエッセイ詳細

イッセイエッセイ

1169号 数にはあらず、英単語

2016年07月05日(火)

 英語教育では、「話す英語」と「書く英語」とに分けられると考えている。もちろんこの両者の間にも、共通点はあり影響し合う。しかし、学習においてはその習得方法や基本とすべき心構えとして、話す英語と書く英語とでは、かなり差異があると意識すべきとの感覚が、教育の場において必ずしも十分ではないと思える。
 「話す英語」は「聴く英語」がベースになっており(音の世界)、「書く英語」は「読む英語」がより深く関係している(文字の世界)、このように大体考える。もとより繰り返しになるが、英語も言語学習である以上、目・耳・口・手が相伴って四位一体で働くべしということが大原則であろうにしてもだ。
 そして小・中・高校の英語教育において、文法を理解し伝統的な学習方法の中で答案を書き、さらに聴き取りの出来もまあまあと一応の満足を得たとしても、されど話すことにおいては期待どおりの成果を相変らず見出せず、という結果なのは一体どうしてか?英語と日本語の間には、言語上の遠隔性という格別の障碍があるにしても、何かそこに英語の教科教育法において改善の余地が多々あるはずと思うべきであろう。
 英語そのものは一昔と違って今の世の中には氾濫しすぎている。それでも学校ではなお、中学校での(とくにこれからの小学校の英語導入に際して)学習の負担を少なくするため、扱う単語数を何語以内にするのだと、形式的に制限するばかりで、単語といっても何が重要な役割をもち、何がそうでない単語かの区別をほとんど加えていないように見える。
 ちなみに今日の日曜の新聞の社会面(朝日の34・35面)の二面をとりあげ、そこに紙面下部にある広告欄もふくめて、カタカナ英語が一体どれ位出ているかを、ピックアップしてみた。
 イベント/グループ/テーマ/ホームルーム/アイディア/プラン/アルバイト/データ/メンバー/プレッシャー/パート/フード/サービス/スクーター/カメラ/バイク/アパート/ハンドル/ナンバー/プレート/オレンジ/ピンク/エリア/ミックス/ゾーン/マンション/カード/ローン/ラスト/ステージ/フェスティバル/インフォメーション/ホール/カルチャー/センター/インターネット/メーカー/エッセイ/コンテスト/アド/ホームページ/オリジナル/メール/スポーツ/キャンパス/オープン/ケース/マネー/ロンダリング/リーダー/コンビニエンス/ストア/エコノミスト/ゲスト/クロス/トーク/スクエア/グローバル/マイナス/ホスト/タワー/ビッグ/アクティブ/ラーニング/シリーズ/チャレンジ/ゼミ/ユニバーシティ/カレッジ/チーム/ワーク/スキル/インターンシップ/ニュー/テキスタイル/アドバイザー/スペシャリスト/カラー/コーディネーター/ウェブ/デザイン/アロマ/テラピー/ファイナンシャル/プランニング/ブライダル/ゼネラリスト/マーケティング/ビジネス/チェック/ファッション/ハウジング/コース/メディア/プロフェッショナル/アマチュア/ダイヤ/オークション/クレジット/ボランティア/クリック/ネット/ページ/バレエ/ロイヤル/シーズン/プリンシパル/ダンサー/コンクール/エコノミー/クラス/ケース/アクセス/ミュージアム/アート/アプリ/ガード/プレミア/ジェット/エア/プロジェクト/
 次にスポーツ紙面(全体で4面あり)はどうか。
 なお上記の社会面もふくめ、余りに繁用されている略語などは除いている。
 スタジアム/メートル/マーク/ランキング/タイ/ゴール/フィニッシュ/レース/ハイライト/リーグ/トーナメント/ワールド/カップ/プレッシャー/ピンチ/プレーオフ/スタート/クリア/ポール/ボルト/ドクター/ストップ/ルール/サポート/トライ/パス/リード/リレー/トレーニング/スピード/タイム/ステージ/ホーム/サイド/サポーター/ミス/ドリブル/クロス/バック/ハーフ/カウンター/ヘディング/アウェー/フリー/ブロック/シュート/パワー/プレー/エース/ダイレクト/ループ/ポシティブ/スルー/イメージ/リスト/オーバー/エイジ/クラブ/ウエイト/リフティング/ドーピング/デビュ/タイトル/ダブル/センター/ラウンド/スコア/ベスト/パット/メジャー/ダート/ワイド/ファン/タイミング/フォーム/スプリット/リズム/イニング/コンディション/ライバル/マウンド/スライダー/カーブ/スタミナ/チーフ/コーチ/ドラフト/エージェント/スウィング/スタンド/グランドスラム/ダイヤモンド/
 これらのカタカナ英語は全体として300語に近い単語数であるが、新聞上では大体は名詞ないし名詞的に使われている。この一部の紙面から取った約300語というのに加えて、新聞上では使わないような普通の英語の動詞や形容詞その他を含めると、中学英語で習う語数1200語程度の数に語数だけでいえばすぐになってしまうのではないかと推測できる。
 しかし、学習で大事なのはなんといっても「動詞」であろうし、その使い方の能力の広がりこそ問題なのであろうから、たとい教室で重要な単語を選んで数を決めている積りでも、単語数だけに神経が行き渡るだけになり、日常に話して用を足すための大事な方面がおろそかになっては、大事は始まらないのである(エッセイ第941号「英語動詞の勢力」を参照)。

(2016.6.12 記)

 ところで、NHKラジオの基礎英語Ⅲの投野由紀夫講師は、今週の番組の中で次のようなことを生徒にアドバイスしているのは、もっとものことだと思う。
 一番よく使う100の単語で会話の7割を占める。使いこなしに時間がかかるが、これらの単語は幹となる単語であり太くしっかり育てる必要がある。その中心は20語ほどの動詞であり、これは中学1年程度のレベルである、しかし使いこなしが上達のカギになるのであると。

(2016.6月最終週 追記)