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イッセイエッセイ

1160号 いとしのクレメンタイン(西部劇の看護婦)

2016年05月21日(土)

 きょうは「看護の日」である。周囲の男たちの無理解とたえず闘いながら、クリミア戦争(1854―56年)において看護活動の新しい意味を創り出した女性であるナイチンゲール(1820.5.12―1910.8.13)の誕生日にちなんでいる。きょうはそのため午前中に、看護協会の会館において「看護の日記念大会」の式典が開かれた。
 フローレンス・ナイチンゲールは、英国の裕福なジェントリーの家系に生まれ高い教育をうけ、ギリシア哲学、その他数学・経済学・統計学などをはじめ学識も深かったと伝えられている。
 ここでナイチンゲール女史の時代から三十年ほどのちのアメリカの出来事に話題がとぶ。
 最近また『荒野の決闘』(1946年)というハリウッド西部劇の何回目かを見た。日本の時代劇でいえば高田馬場の決闘や荒木又右衛門の仇討など定番の活劇物に似ており、さまざまな俳優によって何回も映画化されている。ジョン・フォード監督のこの映画は、保安官ワイアット・アープをヘンリー・フォンダが演じている。バート・ランカスターなどに較べると感情があまり外に表われず淡々として言動が自然である。突飛な比較だが所作がどこか笠智衆に似たところがある。ドク・ホリデイ(ジョン・ホリデイ)がヴィクター・マチュア、クレメンタイン・カータ役はキャシー・ダウンズという女優であるがほとんど無名である。クレメンタインは、酒場の踊子でドクの情婦チワワに扮するリンダ・ダーネルと較べたら存在感がうすく、全くの動と静、濃と淡、華と淑の関係にある二人の女優の役柄であるが、この映画の余韻は、アープ保安官を大平原の中に見送るクレメンタイン嬢の後姿に鮮明に残るように作られている。
 この映画の本当の題名は周知のように「My Darling Clementine」であり、主題歌としても有名である。クレメンタイン嬢は、結核を患って東部ボストンから突如姿を消してしまった婚約者の外科医ドク・ホリデイを遥か尋ねて、ようやくこのアリゾナ州のツーム・ストンの町で彼を捜しあてる。
 このクレメンタイン嬢の職業が、今日の話題の看護婦なのである。彼女が実在したかどうかは、この映画のクライマックスである「OK牧場の決闘」(1881年に起っている)に関連させてみても、虚実何れかといえば実には遠いと思える。しかしこうしたプライドをもった気丈な職業女性たちが西部に赴いた実際の例が少なからずあったからこそ、映画のストーリーにも登場するのではないだろうかと思う。
 今日の記念日では、ナイチンゲール女史とクレメンタイン嬢の姿が、わが心の中で無関係にどこかで重なったため、二人の女性を話題にして看護師たちの勇気と行動力に期待したいという趣旨の祝辞を述べた。

(2016.5.12当日 記)