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イッセイエッセイ

1097号 分数の割算

2015年12月28日(月)

 数学者の岡潔先生は、数学理解の道筋は、簡単で解かることから始めて、1つひとつ確実に段階を登ってゆく性質をもった勉強であるということ、それぞれの階数は段差はたいしたことはないが、1つでも踏みはずすと先には絶対に正しく進めないし、ふっ飛ばして登ってゆくこともできないこと、このことを肝に命じて教育したり研究しなければならない、と述べている(497号に関連)。
 県内の小学生が県庁見学にみえることがあり、その際に何をいま習っていて、どんなことが難しいのか聞いてみることがある。そうすると、分数がむずかしいという答えが何度か返ってきたように思った。全国の学力テストの結果をみても、分数の考え方に関連した問題が正答率を下げていることも、あわせて情報として聞いている。
 分数は小数よりも直感的に意味や大小関係が分かりにくい。通分や分数どおしの掛算あたりまでならまだいいが、割り算になって来ると、具体に頭に浮べる観念の方があいまい化する。結局、割り算は分母と分子を逆にして掛算すれば答えが合うのだと一種の経験論として教え、割り切ってこれで先の単元に行くのが子供たちの体験であろう。要するに計算問題のドリルの一種にすぎないという受けとめになる。
 自分の小学生のときの変な想い出の一つに、小学5年生のときの分数のテストのことがある。当り前のごとくノートには横に罫線が等間隔に印刷されている。分母・分子の間の横線をいちいち書くのは無駄なことだと生意気に思って、分数のこの線をすべて省略して、罫線の上下に数字を書いて×や÷だけを付けて答案を出したのである。先生から、こんなものは分数ではない、手を抜くとはとんでもない、と大きな目玉つまり零のマルを頂戴したのである。
 かのごとく子供にとっては、分数の加減乗除の意味などは気にもかけないで学習していくので、最近の「みずから考える」式の学力テストに直面すれば、たちまち子供たちは分数の観念が背後にあるひねった問題は落し穴にはまって、出題者の期待どおり間違うことになると思うのである。
 たとえば4/9÷2/3 の計算方法は、学校教育ではこれを理解させる手順は様々にあるのだろうが、結局は4/9×3/2=2/3と逆数の掛算で解消する方法を教えられる。昔のことは憶えてはいないが、そう計算しているから子供の頃にそのように教えられたのだと思う。
 では、この同じ問題を4/9÷2/3=(4÷2)/(9÷3)=2/3というように、分子と分母をそれぞれ割っていかにも子供がしでかす失敗の典型のように、割り算のまま幼稚に実行して、同じ答えを出したらどうすべきか。こちらの方が割り算のままだから、数学的にいわゆるエレガントであり統一感があってわかりやすい。ではこうしてもよいということを、アルキメデスの風呂と王冠のごとく、どうやってハッキリ子供に悟らせることができるであろうか。
 4/9×2/3=(4×2)/(9×3)=8/27だから、割り算の方だって同じように割ればいいことだよと、何故教えられないのか、突っこんで表現するならば、何故そうなるのかと教えられないのか、という疑問なのである。
 分数の割算は、比率どうしの比率はいくつか?ということであり一種の抽象の世界に入る。つまり掛算においては×2/3は被乗数(4/9)を2倍して、さらに1/3にするのだからわかる。割り算の方は(÷2/3)について、被除数(4/9)を半分(÷2)にして、さらに3倍(÷1/3)にするだけだから分子と分母どおしをそのまま割ればよいのだ、ではたして子供の腑に落ちるや否や?
 さらに4/9の中に2/3がいくつあるか、ということだから2/3を1としたとき4/9がどんな大きさになるかと同じことであり、4/9÷2/3=(4÷2)/(9÷3)÷(2÷2)/(3÷3) ここまでは比率が変らないので等しいまま、そして(4÷2)/(9÷3)÷1/1=2/3÷1で2/3 になる、ではまたして腑に落ちるや否や?
 なお一般にすぐに割れない場合、たとえば2/3÷4/9=(2/4)/(3/9)=(1/2)/(1/3)=1/2÷1/3ここで1/2を3倍することだから (答)で同じ、でわかるかどうか。

(2015.12.26 記)