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イッセイエッセイ

1080号 利益と理念

2015年11月27日(金)

 「今日の本棚」という紙面には、毎日新聞が日曜ごとに書評を中心に読書関連の記事を載せている。
 今日(2015.11.15)は、最近出版された「論文集 門戸開放政策と日本」(東京大学出版会)をもとにして著者・北岡伸一さんにインタビューをした特別の写真入りの書評が載っている。記事には「理念国家アメリカを歴史に学べ」という表題がついている。アメリカの東アジア政策の根底を貫く門戸開放政策に着目しながら、19世紀末から今日まで現在も変らず、日米両国の大陸政策や外交において存在する双方の認識のずれというものがあるというテーマである。インタビューを短くまとめたためか、また問題の難しさのためか、読んでみて自分の頭にうまく整理できない箇所がある。
 著者の言葉をインタビューの最初のところで、まず次のように聞き取っている。
 「日本陸軍の大陸政策が、私の最初の本のテーマでした。次に、それに強く反対したアメリカの中国政策を理解したいと思い、アメリカに留学しました。その時考えたのは、利害・・だけでは国の行動を説明できないということ。どんな価値観・・・によるかで物事は違って見えます。アメリカには、日本を知らずに議論をしているところがありました」(傍点は小生。以下同じ。)
 著者のこの「利害」と「価値観」の相互関係はいかなるものか、並列に置かれるべき観念ではないと思われる。米国務省が日本に対抗して満州に進出することを国益とみなし、実際に微々たるものにすぎなかった当時の中国経済の重要性を大統領に対し誇張して伝えたという事実、また、門戸開放政策がアメリカの伝統的な反植民地理念に根ざしていたという意味の大きさ、日本が目前の国益に終始して行動したということ等が著書には書かれているようだが、互いの関係についての聞き手の解説はわかりにくい。
 最後のところの聞き取りは「歴史には人類の偉大さから卑小さまで詰まっている。それをどう引き出すかはわれわれの課題です。アメリカの理念・・を読んでいけば、衝突を避けつつノーと言える場合も少なくないのです」
 この説明も歴史における偉大と卑小といっても、次元の異なるものをそのまま比較しているような印象をうけてしまう。理念と国益などとが一体どういう結びつきを持っているのやら、要は本書一読ということになるのであろうか。
 今回JICA理事長に就任されたというこの国際政治学者の用いておられる「利害」、「価値観」、「理念」の意味と相互関係について、くり返しになるが、日米の外交力学における非対称という局面の中で、一体どのように位置づけられるのであろうか。(1076号参照)
 同じ紙面の広告欄には、「ペーパークリップ作戦・ナチ科学者を獲得せよ!―アメリカ現代史の闇をえぐる衝撃のベストセラー」という本が宣伝されている。

(2015.11.15 記)