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イッセイエッセイ

1073号 住宅と若者

2015年10月16日(金)

 親元から独立をして離家・結婚・出生など、若い世代が次の段階になかなか進まない停滞現象が起きているという。平山洋介教授(神戸大)は、こういう重要な最近の社会現象を「経済教室」(日経新聞2015.10.12)の中で述べておられる。
 戦後の日本の住宅政策は、持ち家促進の政策支援が中心となってきた経緯があり、先進諸国と比べても日本の「賃貸住宅政策」は異例といってよいほど劣っていると言う。親元離れ世代形成が90年代に比べて2/3になっているのは、背景には経済低迷による若年層の雇用と所得の不安定さがあるが、もう1つ原因として見落されているのが、この種の住宅問題だと言う。日本では住宅政策の役割を、結婚・出産問題と関与づける議論がはなはだ未発達だと言うのである。
 例えば東京都内の住宅賃貸市場の過去25年間の傾向を調べても、世帯年収別の借家世帯数の構成比は低所得グループ側に少しずつウェイトが傾いているのに対し、家賃別の借家世帯数構成比では高家賃側に劇的にシフトしていると指摘する(住宅統計調査報告)。そして若者が独立できず動かないのは経済活力をそぐのみならず、結婚、出生を抑制する要因になると言う。
 「離家、結婚、出生に向うかどうかは、個人が自由に選択すべき問題だ。社会と国家のために家族をつくる必要はない。しかし、次の段階を望む若者が多いのであれば、その条件を整えることは公共政策の課題になる。若い世代の選択の幅を広げるために、『住宅からのアプローチ』がもっと試されてよい」と結んでいる。
 しかしこの最後のところは、政府を有効に説得するためにも、著者の住宅政策のねらい、あるいは都市と地方での政策的な違いの有無などをふくめ、もう少し結婚・子育て問題に立ち入った主張の仕方があるのではないかと思うのである。

(2015.10.12 記)