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イッセイエッセイ

1044号 蜘蛛・毛虫・芋虫

2015年05月31日(日)

 庭のエゴノキに白い小花が咲き出した。エゴノキの根元にはもう落花があり、次々と咲いては散る習性なのだろう。これまでは小さい花をつけていたが、今年は花が大きくなったのではないかと思う。花が目立つようになったのを、妻は喜びながらも、花壇の方に根を伸ばして養分をとれるようになったからで、エゴの名に合っているとやや冷たい。

 きょうの午前中は部屋の中が寒いので、日向ぼこをかねて庭に出る。果木の鉢を眺めると一筋光るものがある。小さいクモが網を張り始めたのである。光線の方向をかえて見たら、極細の網がかなりでき上っている。そして目に止まらぬほどの微小な羽虫がすでに巣に掛っており、クモは餌を相手にしながらに仕事を進めている。
鉢植の木はどれがサクランボですももかは、実がなったことがないのでまだわからないのである。昆虫の目線のままで柔らかい若葉の様子をじっとさぐったところ、今日もまた毛虫が取りついている。最初の一匹は濃灰色に黒縞のある、一寸で五分塊の細い毛虫で、初めて見る魚のような色合いの虫だ。割箸で挟もうとしても動作が素早く抵抗する。この木で徐々に卵から成長したとも考えられず、どこからやって来るのだろうかと疑問をつぶやくと、家人が植木屋さんの話しでは毛虫は飛んで来るんだと応える。羽根も持たないのにそんな訳はないだろうと言って、次の鉢に目をやる。
 ところが今度はにいかにも毛虫然としたのを発見する。大きめの褐色の奴が長い細毛を密集させ葉の陰にとりついている。周りの葉が食べられておらず今朝の新参とみられる。いざ覚悟と退治の箸を向けたが、こっちの毛虫はもっと敏捷である。あらぬことか身を縮めて丸くなり突然近くの下葉に飛び移った。そして葉の裏にかくれた。飛ぶ毛虫がいるのである。さらに追及したところ毛虫は箸に抓まれる直前に地面に落下し身を守る。こんな運動能力の高い毛虫は初めてである。それにしても、この毛虫は本当に飛びながらの旅をして鉢の木にたどり着き、運わるく半生を終えることになったのだろうか。
 別の鉢の根元には、乳色のさらに太った芋虫が一匹、土から出て丸くなっている。先日はもっと沢山集まっていたようだ。今日も天気がよいので熱気のために鉢の土中にいたたまれず表面に出たのかもしれない。芝生の上に放っておくと、頭のところの短い繊毛のようなものを動かすだけで、身体を移動させる気配はない。後で様子をみると、姿がなくなっていたが、土にもぐったとも思えず鳥に見つけられたとも思えず、行方知れずである。

(2015.5.17 日曜 記)