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イッセイエッセイ

1017号 思考の方向転換

2015年01月12日(月)

 自分たちは一般に流布している考え方に馴れており、その考え方に立って目の前の問題について推論したり解決を図ろうとする。
 福井は小・中学校の学力と体力が日本一になっている。しかし、高校の学力・体力つまり大学入試の成績や職業教育レベルにおいて果して日本一かといえば、必ずしもそうとは言えない状況である。
 そこで次に向かう思考経路を、どのようにとるかである。
 これまでであれば、高校の授業内容は中学と比べて格段に高く高一ギャップが生じないよう、義務教育段階での授業水準をもう少し上げてくれないと困るというのが決まり文句であった。このことに、さらには大学側、企業側でも人材の受け手として同様の感想を示すことが多い。しかし、小・中学校から高等学校との間の話に論点を戻す。
 そこで、せっかく努力して小・中学校の先生達が子供たちを学力・体力日本一に引き上げているのであり、むしろ高校の方がもっと責任をもってこれを引継いで、学力・体力日本一にふさわしい高校教育をなすべきことを、小・中学校側から様々な方法によって求めるべきではないだろうか。そして小・中学校にはその資格があると思うのである。そのことが又、小・中学校の教育努力にもはね返り、よい意味での上昇循環が生じるはずである。これが教育の分野での「思考の方向転換」の例である。

 次に、観光の仕事を例にとる。この正月休みにTVでシリーズ放送している「世界ふれあい街歩き」という番組を見た。イギリスの西岸にある産業革命で有名なリヴァプールという都市を数時間かけてカメラの眼で街歩きをするのである。地元観光の代表者のような人も出演していて、年間4,000万人ほどの観光客がいると伝えていた。ちょうど(統計のとり方はちがうのかもしれないが)北陸三県の入客に匹敵する。リヴァプール市の人口はマンチェスターと並び45万人程度である(ネットで調べると市域はあわら市くらい、最盛期には人口も80万人であった。世界大戦で独軍の爆撃で衰退、産業資産がユネスコの世界遺産にもなっている)。観光的には産業革命の発祥の地であるということ、そして何といってもビートルズの故郷ということが寄与しているのだろう。
 ビートルズの誕生した都市であるから、ジョン・レノンの生家も残り、彼が聖歌隊で歌っていた教会のベンチにはそれを記念した銘板まで付されている。しかし世界を風靡したとはいってもビートルズの名曲や歌詞が天から舞い下りたものでなく、五十年前に彼らが生まれ育ったリヴァプールの、街の小さな通りやその前にある銀行、孤児院の庭などをテーマに歌っており、いまでもその場所が変化しながらもちゃんと存在しているのである。ビートルズの世界性が、非常にローカルな場所性につながっているのである。

(2014.12月 記)

 しかし、そんなものがもしほとんど残っていなくても、ビートルズのファンなら観光客として街を思い出の地として訪れるであろう。
 もし観光が、最近流行の言い方を用いて、ある場所についての物語(discourse 言説)から成り立っているとすれば、その場所の住民がみずからの誇るべき物語りを身をもって知らなければならない。また心からそのことを伝える気風がなければならない。我が地を学ぶときにも、他の地を訪れるにしろ、まずみずからこのふるさとでの人生が楽しく豊かなものであるとの確信が持てなければならない。

(2015.1月 記)